恋愛難民のすすめ「さんかく」

純喫茶磯辺』で脆くリアルな人間模様を描いて楽しませてくれた吉田恵輔監督の新作。本作『さんかく』でも同様にリアルな日常風景が描かれる。

倦怠期を迎えたカップルとその彼女の妹。三人がある感情のこじれからもつれ込むように繋がっていく。人との関係性からでた綻びは人との関係性でしか取り繕えない、そうしてマルチ商法のように人は繋がっていくのだ、という皮肉なリアリティーがあって、登場人物に抱く感想がそのまま自分に降り掛かってくる。

主人公モモちゃん(30歳)。彼の車にはなんと後部全面に自分の姿が描かれている。痛車である。光GENJI風のそのインパクトある絵が彼のナルシストぶり、尊大さ、そして、勘違いっぷりを物語っているが、劇中でこの絵に触れることはない。おそらくこれはモモちゃんが自身を投影したキャラクターであることの監督なりの「照れ隠し」である。

自分は愚かで情けなくてカッコ悪い男なのだということを、どこかギャグとして打ち明けたい、失笑させてやりたい、そんな思いが見て取れる。男らしくないと自分を恥じ入ることができるのは「男らしい」コトであって、それができないからダメなのだ。コレを描いてくれた吉田監督をぼくは男として絶対的に信頼する。そして、そんな男にさえ想いを寄せてくれる田畑智子。彼女もまた完璧ではないが、最後に見せるヒマラヤほどの大きな「母性」にぼくは完全にやられてしまった。バタ子かなわないよバタ子。

ひとりじゃダメでもふたりならナントカ。そんな微妙な関係性によって、人は“△”になれるのだ。(★★★★)