新たなる絶望,そして希望『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

スター・ウォーズ/フォースの覚醒』感想

「正しいことだろ」−−−そう言ったフィンは,落ち着け大丈夫と自分に言い聞かせたり,逃げなきゃダメだと皆に同意を求めたりする.ファースト・オーダーのあの場所へ戻ってしまったら,自分はきっとダメになってしまうと思っている.けれど,それは所詮逃避だ.困難,脅威,呼び名は何でもいいが,それらから逃げ続け隠れ続けることは,それらに追われ続け怯え続けることでしかない.


廃品を磨く老婆を眺めレイは思う−−−「このままだと私も…」.マズ・カナタに目を閉じてといわれても彼女は目を閉じなかった.閉じた先に見えてくるであろう真実から目を背けたかったからだ.ジャクーに迎えが来るのを待っていると名刺みたいに頑なに言うのは,迎えは決して来ないという事実を認めたくないからだ.「待っている」と自分に言い聞かせ,こうしていれば「迎えに来る」と,可能性を追い求めることで彼女は自分を偽っている.


ハン・ソロとレイアも「自分の世界に逃げ込んでいた」と言う.その躊躇には何層もの上書きを感じさせるが,あの勝ち気なソロとレイアが自分の世界に逃げ込む?そこには果てしない闇が広がる.そしてその闇の中にいるカイロ・レンもまたダース・ベイダーへの心酔に逃げ込んでいる.自分の真の理解者は自分であることに気付いているのに,漆黒のマスクでその心を覆い隠している.そんな自分には決して出せない一歩を踏み出したフィンへの憎悪は漏れ出て,自分をお払い箱にしかねないレイへの恐怖は見透かされてしまう.


『フォースの覚醒』は,弱く愚かで塞ぎ込んでいた者たちが,歩みを進める/進められない物語だ.


そこにはそれぞれの「覚悟」があり,それ相応の「試練」があり,それゆえの「挫折」があるのだろう.何しろこの「始まり」というのが,確実に「終わりへ向かうもの」なのだ.この映画の血や死,涙の重みは「終わり」を強く感じさせる.EP7はその涙を拭う「過去からの解放」で幕を開けた.ラストに現れる星の青色が,ちょうどボクらのいる星に似ているのは,遥か彼方の銀河系にいるボクたちもこの旅に参加しているということだろう.レイとフィン,BB-8にポー,そしてカイロ・レン.今度の旅はきみたちと一緒だ.立ち上がろう,互いの手を取り合って.目をとじてMay the force be with you.