「チェンジリング」

本作のアカデミー賞へのノミネートはアンジェリーナ・ジョリーの主演女優部門のみ。これが信じられないくらい「さすがはイーストウッド!」と敬服するしかない傑作だった。

めちゃくちゃ不謹慎なことを正直に言うと、この物語から「衝撃」は受けなかった。LA警察の保身行為なんて下らない。ただ反吐がでるだけだ。少年たちの殺人事件も確かに悲惨だが、映画的にはいつサイコサスペンスに陥るのかと変にハラハラさせられた。

これはイーストウッド監督自身の中立的な視点・演出のせいだと思う。単に俺が馬鹿の可能性も大だが(死)。逆にアンジェリーナ・ジョリーが入魂の演技で演じたクリスティン・コリンズにはバッチリ感情移入できた。彼女と共に苛立ち、戸惑い、悲しみ、祈るような気持ちにもさせられた。

終盤で真相を聞いたときに彼女が見せる横顔には、絶望と希望が入り交じって見えた。鏡に映っていたほうが絶望かも。

そして彼女はその希望を糧に生きていくこととなるが、あれが本当の「希望」なのだろうか。「人の在り方」を問われたような素晴らしいラストでした。(★★★★)