「サマーウォーズ」

いくら中の人が好きな人ばかりで監督・脚本も好みの方とはいえ、過剰な期待は禁物だ!と臨んだ大期待作(?)を観て参りました。たしか予告編にはお婆ちゃんに「わたしたちの力を見せてやろうじゃないか!」って台詞があって、なんだか応援したくなるような高揚感を感じていたんだけども、本編からはその台詞も高揚感も感じ取ることができませんでした。さらに先日観た9分間のアバンタイトルのワクワク感はとんでもなく素晴らしいんだけど、それ以上にいい気分になれる場面がなかったです。下半期一本目のクリーンヒットはいつなんでしょう、、、。

まずOZと現実世界で繰り広げられる「戦」は、ノーアウト満塁!と言われてもそれほどの危機感が感じられない。野球のようにルールがわかれば緊迫感が生まれるけど、なんだか「とりあえずやばいんですね」くらいにしか思えなかった。期待していた「家族」は「大家族」であることが懸念材料ではあったんだけど、それは世界観を広げるためだと納得。ただほとんどの人が記号化されていて人物描写が深くないので、中の人のように魅力的だとは思えなかった。

あとは「格闘ゲーム」というかアバターバトル?だけど、花札がでてきたことであまり必要性が感じられず、ただのキッカケづくりに終わったと思う。終盤の元気玉っぽい展開も、ナツキは面目を保つために草食系男子悶絶のバイトをオファーするようなキャラなので、どちらかと言えばキングカズマのリベンジ達成をやってくれたほうが感動できた気がする。「見せ場」をつくるために「まだ負けてない!」と延長戦に突入していくのは、上手いことは上手いと思うんだけど、そこに至るまでに誰かに感情移入することができず、期待していたような感動を味わうことはついになかったです。

それでも久しぶりに「普通の日本アニメ」を観た気がして楽しむことはできた。OZで起きた問題を「家族の絆」で解決する物語を実にテンポよくまとめた脚本だったし、細田監督の真骨頂と言える様々なデザインにも目を見張りました。また甲子園、朝顔、風鈴などの夏描写が数多く登場し、夏嫌いのぼくでさえその爽やかさは心地よかったです。斜めから見てしまうとどうしても陣内家の「つながり」が弱く感じてしまい、ケンジとナツキの恋物語、カズマの成長、ワビスケの挽回のどれか一本せめて二本調子にしてほしかったなぁと思ってしまうけど、真新しいことをやると見せかけて「アニメとはすべからくこうあるべし」という細田監督の声が聞こえてきそうなほど万人受けを狙った作品でありました。

好きなものが集まったのに「大好き!」とは言えないヤマアラシのジレンマを抱くことに。心の中で「ぼくのサマーウォーズ」勃発です。(★★★)