恐竜ゴッドファーザーズ「おまえうまそうだな」

どう見ても子供向けアニメの絵とは裏腹に、大人こそ大いに泣ける涙腺決壊の素晴らしい作品でありました。

草食恐竜のお母さんに育てられた肉食恐竜の子・ハート。そんなハートが出会う赤ちゃん草食恐竜のウマソウ。親子のドラマが二重三重に丁寧に描かれていて、正直言ってここまでやるか!と驚かされるくらい「親子の繋がり」というものに踏み込んでいたと思います。

ネタバレになってしまいますが、この映画が単なる「肉食と草食のアイデンティティ・クライシス」だけで終わっていないのは、ハートの実の父親を登場させたこと、そして、彼が下したあまりにも尊い決断あってこそ。もし、彼が肉食万歳!の悪役として描かれてしまっていたら、この映画は一気にスケールダウンしていたはずです。

自分を犠牲にしてでも子供を守る、その覚悟ができてこそ人は親たりえるものですが(ぼくにはまだムリだぴょん!)、もし、その「犠牲」が親としての役目を手放すことだとしたら。子供にとっての幸せが自分以外の誰かと得られるものだとしたら。この決断を下した父親にアンタどんだけ王様なんだよ!と、ワケのわからない賛辞を贈って、この映画への感謝としたいと思います。

映画のなかで描かれる親たちのドラマ、そして、この映画を観て流す親の涙。その姿が子供たちの心に何かを残し、広く豊かな感情を育んでくれたなら、そんなに素敵なことはありません。親の居ぬ間に子は育つ。健やかな傑作!(★★★★)