『ルームメイト』悲劇のヒロイン共演

『ルームメイト』感想。

超面白かったです!回想シーンひとつ取っても丁寧につくられていて引き込まれっぱなしでした。サスペンスだけれど安心印。それに加えて、浮き足立ってしまうようなショッキングシーンも随所に見られて、実にバランス感覚のイイ映画でありました。チワワ!からの〜鍋ごと捨てるッ!That's お・ぞ・ま・し・い。オゾマシー!

【以下、ネタバレ】

春海(as北川景子)は、まず自分自身を救うために麗子(as深田恭子)を生み出し、次に母から解放されるためにマリ(as深キョン)を生み出した。でも、春海は交通事故で彼女たちのことを忘れてしまう。これに我慢ならないのがマリで、春海とマリのいわば仲裁のような立場にいるのが麗子です。

マリが手を下すのは八方美人の看護婦、チワワ、保険屋ですが、八方美人の看護婦への犯行とは、自分のことを忘れてのうのうと生きている春海への怒りで、チワワ=飼われているものへの凶行は、母から解放したのは自分だという彼女なりの嘆きなのだと思います。保険屋を殺めるのは、春海の“保険”人格である自分への自傷行為的な暴走です。自傷行為=やり場のない気持ちを自分にぶつける行為ですよね。なので、華やかなクラブの風景が現実の廃墟になったとき、春海にナイフが突き刺さっています。

麗子は、看病してくれたり、掃除洗濯をせっせとやってくれたり、束の間の幸せを与えてくれたり、常に春海の理解者であり続けます。しかし、その役目とは呪縛でもあるんですね。だから、謙介(as高良健吾)が麗子の代わりとして春海の理解者となったとき、ようやく麗子は春海の前から消え去り“解放”されます。また、全てを思い出した春海が、もう一人のマリを止めるということは、救えなかった“自身のマリへの償い”なのだと思います。斯くして、春海の悲劇から生まれた麗子とマリの魂の救済がなされたのでした。「事件の真相」というサスペンスな物語と、その裏にある各人格の心理描写とが密接に関係=ルームメイトしているという見応え抜群の映画でありました。おわり