「スラムドッグ$ミリオネア」

ここまで脚色されているとは思ってなかったなー。換骨奪胎とまではいかないかもしれないけど、何から何まで変わっていてかなり驚いたわ。原作からは「金」と「奇跡」という言葉を感じたのに対し、映画から感じたのは「愛」や「運命」といった神秘的な言葉たち。一発逆転のサクセスストーリーのなかで、純で一途な恋心を描いたすごーくロマンチックなラブストーリーだった。

結論から言うとこれは素晴らしい映画だ。貧困層の少年たちを「シティ・オブ・ゴッド」のような力強さで映し出したカメラワーク、小説では読みやすい構成も、映画にするとくどくなりがちな物語を物凄くテンポよく運んだ編集、そしてエンドクレジット時に爆発するインド音楽の愉快さ、とまぁ受賞した面での作劇は文句なしに素晴らしい。ウンチに飛び込むシーンでは「トレインスポッティング」のトイレ遊泳シーンを思い出した。

唯一、欠点を挙げるとすればクイズシーンの緊張感がなくなっている点かなー。特にコルトの話とかは「どこから答えを得た!?」となってしまうかも。クイズよりもジャマールの心情とかに趣を置いた感じなので、そういう見方をしてほしくなかったのかもね。ジャマールが欲していたのは金ではないのだ、と。そのおかげで綺麗なラブストーリーにまとまっているんだと思う。んで、この映画の最大の魅力はそこ。

「It is written」それは筋書き通りだった、という言葉が彼に与えられる運命にピタリと当てはまり、この物語の偶然を必然だと語っている。そして、その必然はジャマールのラティカへの「愛なくしてはありえない」のだからロマンチックすぎるんだなー。この映画を観て「んなことあるか!?」と思うのか「あったらいいね〜!!」と思うのか。観る人の人間性もちょっとだけわかるかも。俺は後者だべさ。

前の席の奴が、目障り極まりないくらいやたらと頭を動かすんで、イライラしながら鑑賞する羽目になったが、素晴らしい逸品で大満足できました。この時代にこの映画が生まれたのも筋書き通りだとしたら、いいね。(★★★★☆)