「グラン・トリノ」

クリント・イーストウッド監督・主演作品。2月に公開された「チェンジリング」では、「報われなかった母の愛」を描くことで、「希望」という人間が持つ儚い願いのようなものに対しての、1っの答えを表現していた。もちろん傑作だったんだけど、個人的にはこちらのほうを今年を代表する一本として待ちこがれていた。そして、これまで観てきた映画を代表する一本にまでなってしまった!

本作では「孤独な男の罪」を描くことで、「生と死」「復讐と贖罪」という答えのないものに対しての、1っの答えを表現していたように思う。「チェンジリング」ではタバコの灰が落ちるシーン。「グラン・トリノ」ではグラスを落とすシーン。あれを面白く見せられるイーストウッド監督は本当に凄いと思う。しかも、今回は主演まで務めちゃってるんだから、俺なんかの敬意じゃ恐れ多いわ。

人間が人間のままなら答えがないと思う2っのテーマ。「生と死」と「復讐と贖罪」。前者は「ミリオンダラー・ベイビー」でその矛盾点を描いてくれた。んで後者は「許されざる者」でその虚無感を描いてくれた。どちらも名作中の名作なのに、今回はこれを両方描いてしまったのだから、「どうやってこんな傑作を生み出すのかわからない」って思ったよホント。

ゾディアック相手に差別用語連発の会話をしたときは、腹痛くなるほど笑いをこらえたし、2っのテーマに立ち向かっていくときは、字幕が読めなくなりそうなくらい涙を浮かべた。感動!感服!感無量!と、俺が知っている言葉じゃ到底表現できない素晴らしい映画でした。こんなに心打たれる映画を劇場で観れるなんてマジで最高だ!

終盤は「彼がどう出るのか?」まったく想像が付かず、神父さんと一緒にハラハラドキドキしてしまった。これが最後の主演作になるのは寂しいけれど、こんなにもカッコイイ引き際はないんじゃないかな。本当にカッコイイ!(★★★★★)