「バーン・アフター・リーディング」

コーエン兄弟最新作。もはやお家芸と言えるドタバタ不条理コメディに錚々たるメンバーを出演させてしまった。なかでもジョージ・クルーニーティルダ・スウィントンがかなりイイ味出してる!オドオドっぷりと尊大っぷりがもう最高!

豪華スターたちの物語が、勘違いや思い違いにより少しずつ絡み合っていくコーエン兄弟らしい作劇で、事態はもはや予測不能!!と言いたいところなんだけど、今回はちょっと強引だったので割と予想できた。まぁでも、とにかく画面上にふざけたスターが必ずうつってるので退屈はしない。ブラッド・ピットフランシス・マクドーマンドもなかなかイイ脳みそ筋肉コンビだったのでは。

映画を見終えて強く思ったのは、「勘違いしている人間」や「馬鹿なことしてる人間」を見ているのはどうしてこんなに可笑しいんだろう?ってこと。観客にあらかじめ答えを提示しておいて、劇中人物を迷走させる。そうすると「どうやってたどり着くのか?」って興味がわくし、「あー(笑)なに言っちゃってんの(笑)」とあざ笑うことができる。人は自分より劣っている者の滑稽な姿を「見下して」笑ってるんだわね。その視点がファーストシーンとラストシーンに繋がるわけですな。うん、やたら上すぎるけどね。

あとは男と女の扱いの違いだな。情けない役柄ばかりの男性陣。気がつけば「大迷惑をこうむった」のは男ばかりな気がする。ネットリした声色が不快感を誘うジョン・マルコヴィッチは、頭に血が上ると汚い言葉を連発するアホ。そんな彼は父の期待に応えられない〜妻に愛想を尽かされる〜おまけにあんなことにこんなことに〜ともう大変。そして、何気に一番可哀想なのがリチャード・ジェンキンス。物悲しい演技をしているだけに尚更可哀想だった。それが笑えるんだけど。全身整形という願いだけであそこまで周囲の男を振り回すとは、まったく女とは罪深い生き物だ。

あ、予告に使われていた歌は予告用だったのか。気に入ってただけに残念だった。けどあのCIAマンって歌もなかなかでありました。ロミジュリのパロディもね。(★★★)