「ミルク」

アカデミー賞主演男優賞脚本賞受賞の作品。今年はこの調子でいけばアカデミー絡みの作品をほとんど劇場で観ることができる。まさか上映されるとは思ってなかった「レスラー」「愛を読むひと」「それでも恋するバルセロナ」が来月やる。スゲー楽しみ。栃木でこんなに上映されるのは初めてなんじゃない?と思うけど、単に自分の映画守備範囲が広がっただけで、昔は上映されても目に入らなかったんだろう。時代ですね、時代。

そしてこの映画「ミルク」も時代を感じさせるものだった。ゲイであることを初めて公表した政治家ハーヴェイ・ミルクの半生。30年前、彼はゲイの代表として公職に就き、マイノリティーの訴えを叫び続けた。政治的な内容なので眠くなってしまうかと思ってたら、非常にわかりやすく進行してくれるので形勢・状況が無知な俺でも把握でき十分楽しむことができた。ガス・ヴァン・サント監督らしい変に魅せる演出はあまり無く、寄り添うような視点で撮られていたおかげかも。

俺自身は生粋の女好きなので同性愛はまったく理解できないし、周りにもいない(と思う)のでいまいちピンとこない部分はある。生理的にイヤだな〜というシーンもあったが、役者陣が素晴らしいので目が離せない。賞を総ナメにしたショーン・ペンはもちろん素晴らしかったんだが、ジェームズ・フランコは初登場シーンから印象的だし、ジョシュ・ブローリンはさすがに上手い。一番気に入ったのはメガネをかけたエミール・ハーシュ。「イントゥ・ザ・ワイルド」より好きな演技だったなぁ。おまけとして「ハイスクール・ミュージカル」のライアン役ルーカス・グラビール。ハイスクールで誰ともくっ付かないと思ったらそういうことだったんですね。

キャスティングの良さはガス・ヴァン・サント監督の男を見る目に敬礼。てかみんなソックリで驚いたわ。ただ、物語はやや予想外な展開で、妙にこじんまりとしてしまった印象がある。「誇れるものが何もない」と言っていた彼のムーブメントとも言える本作がアカデミー賞を席巻したということは、素晴らしいことだと思うけど、ひとつの物語としてはそれほど感銘は受けなかった。やっぱりゲイというものに縁もゆかりもない生活を送っているからかなぁ。

初の黒人大統領が誕生した今、彼が与えた「希望」が時代を変えるのはもうすぐなのかも。(★★★)