「ザ・スピリット」

シン・シティ」のフランク・ミラー初監督作。予告編を観たときはアメコミ丸出しのモーションと白黒赤の色彩。グラフィック・ノベルっぽいモノローグ。そしてサミュエル・L・ジャクソンスカーレット・ヨハンソン。こんな感じのものが印象的だった。話の筋こそ知らないが、ちょっと退屈なつくりだという評判は知っていた。だが実際に観てみると案外面白い。終始ニヤニヤさせていただきました。

最近になってようやく気になり始めたスカーレット・ヨハンソンは、なんだかマスコット的に配置され、様々な衣装でどこか謎めいた雰囲気を醸し出してくれる。時折見せるしかめっ面と不敵な笑みにゾクゾクくる。新米警官と女医の美女二人にはもう一押し見せ場がほしかった。そして何と言ってもラテン系美女の究極形態エヴァ・メンデスがイイ。彼女を見るとどうしてもファーギーが浮かんでしまうのは悪い癖だ。しかしあのParfect assには参った。ピンぼけがなかったら悩殺されていたぞ。

ここまで女のみだな。男を書くなら、やっぱり筆頭はサミュエル・L・ジャクソン。これぞ彼の真骨頂といった演技で物語をかき乱してくれた。あの耳障りな声で「神になる」なんて言われちゃもうたまらん。そこにスカヨハの「神もどきね」という絶妙なツッコミが入る。このナチス劇場はかなり面白かった。やっと主人公スピリットだが、ガブリエル・マクトという方の作品は何本か見ているが初見に感じた。見てくれはアメリカのハンサムなナイスガイ。クラーク・ケントを思い出した。中身はルパン。

クローンなどの裏設定が、チラチラ垣間見えるものの深く言及はされないので、単品映画として見るとどうしても物足りなさは残る。物語の根底に流れる思想も読み取りにくい。そして一番映画的な問題は映像構成が下手なとこ。終盤の銃撃戦や格闘シーンなど、動きが激しくなると何がどうなってるのかうまく映し出せていないのだ。方向や角度もなんかちょっとおかしい。これはおそらくコミックに忠実に描きすぎたせいだろう。「ウォッチメン」のように要所要所で組み込まれていれば印象的な映画の1シーンになると思うんだけど、全編通してやられると見栄えもイマイチだ。

動く漫画は必ずしも魅力的には映らないんだと再認識。そして俺の魂を燃やすのはやはり女なんだと再確認。どうもありがとうございました。(★★★)