「おと・な・り」

上映開始ぎりぎりに入場したので、席につくときにはもう下手なパントマイムが始まっていた。館内は暗かったが、やや女性のほうが多く見えた。上映されてしばらく経っていたので、もしかしたら誰もいないんじゃないか?と思っていたのでこれは驚き。映画が始まるといきなりフランス語っぽい言葉が聞こえる。かなり慌てて駆け込んでしまい、まだ息が整っていない俺は「場所まちがえた!?」と焦ってしまったが、どうやら間違っていたのは別のものだったらしい。

予告編は見たことはないけど、麻生久美子岡田准一がでてる「お隣さん」の映画だということは知っていた。まぁ題名からして明らかなんだけど。その通り隣人であることが示され安心するんだが、なんだか画面は妙な雰囲気だ。劇中で語られていた基調音のような何かが俺には合わないのだ。麻生久美子がでてるラブストーリーなら大丈夫!と気を取り直すが、どうも予想とは違い普通には描いてくれない。だんだんと観るのが面倒な物語になってしまった。

世知辛い日本では「近くて遠い存在」である隣人。音が筒抜けのアパートでもそれは例外ではなく、二人は互いの名前・顔さえ知らない。そんな二人がどうやって恋に落ちるのか?これを観に行ったんだが、それがとんだ見当違いだったようだ。そう感じたのは岡田義徳が本性を現す場面。それまでリンクこそしないものの「海外に夢を抱く二人」として描かれていた雰囲気があの場面で崩れ落ちた。そこから謝恩会などの展開にはもうがっくり。

谷村美月の登場は嬉しいサプライズだし、池内博之はまぁアリだ。しかし花屋と会社の同僚、そして岡田義徳。このあたりが邪魔くさい。特に岡田義徳は演技は良いんだが物語をおかしな方向にもっていくのできつい。あれに時間を割いたせいで肝心の二人のパートが弱くなった。終わってみると各々がどういう立ち位置で何を描いた映画だったのかさっぱりわからない。雰囲気づくりに終始していて物語がつまらないのだ。

上映終了後、後方から女子たちの絶賛コメントが耳に届いたが、俺にはその感性がよくわからん。きっと「おざなり」のデートには使える映画なんだろう。(★★☆)