「レスラー」

「最初からわかっていた ハートに矢が命中することは」。そのとおりでした。佐藤大輔の煽りVに何度も感動させられてる俺ですから…この映画を気に入らないわけがない。ミルコ戦の美濃輪育久の入場で感極まってしまった俺ですから…涙をこらえられるわけがない。プロレスラーの中のプロレスラー・ランディ“ザ・ラム”ロビンソン。彼の背中を見た瞬間に察したよ。すべて決まりきっていたんだとね。

監督は「π」「レクイエム・フォー・ドリーム」のダーレン・アロノフスキー。二作のような映像演出は「不作法」だと言わんばかりに鳴りを潜め、ただただ彼の背中を辿る。その後ろ姿たるやなんという物悲しさだろうか。闘い続けた男のくたびれた体にしか醸し出せない“哀愁”に痺れまくった。男だけではなく女性陣も見応え抜群なのがイイ。マリサ・トメイはとても40後半とは思えないプロポーションだったし、エヴァン・レイチェル・ウッドは相変わらず吸血鬼みたいな綺麗さだ。どちらにも目を奪われました。

と、なんやかんや言ってもこの映画の立役者はミッキー・ロークだ。彼の演技はまるで演技には見えなかった。もう痛々しいくらいに「そのもの」なんだわ。あーゆーのを“神がかってる”と言うんだろうな。どこまでも不器用な男ランディは、自分の居場所を見つけることができた。自分が自分らしくいられる場所=リングだ。だが、そこでしか生きられない彼には父親など務まるはずもなく、そこでしか生きられない彼にはスーパーの店員なんぞ出来るわけがなかった。だから彼はそこで生きる道を選ぶ。

彼が見つけたその場所では、眠りにつく前に必ずやらなければいけないことがある。共に生きる「家族」に必ず見せなければいけないものがある。心臓のカウントなんぞお構いなしだ。だから彼は満身創痍になりながらそれを実行し、そこで「生きる道」を選ぶ。その姿の輝きたるやなんという心苦しさだろうか。あまりに苦しくて切なくて…涙がありえないくらいでてしまったよ。

今年のベスト1は間違いなく「グラン・トリノ」だろう。しかしこの映画はさらに上をいく“60億分の1”の映画だ!!ありがとー!!!(★★★★★)

【追記】鑑賞後に三沢光晴氏の訃報に接する。悲痛すぎる…。ご冥福をお祈りします。