「それでも恋するバルセロナ」

ウディ・アレンの映画は苦手だったんだけど、スカーレット・ヨハンソンを起用したロンドンの二作がなかなか良かったのと、彼女プラス、ハビエル・バルデムペネロペ・クルスという強力な出演陣という助けもあって、鑑賞前の期待値はかなり高かった。だが、観てみるとどうだ。バルセロナで繰り広げられる恋愛映画というより「ウディ・アレンが持つバルセロナへのイメージ」をダラダラと聞かされた気分だ。

いきなり登場人物の心情をすべて説明してくれやがる小賢しいナレーションで始まり、かなり戸惑ったが、…ま、まぁいいかと耳栓をしたつもりで観ていると、全くついていけない物語が展開され唖然としてしまった。いつしかそのナレーションに助けられてしまうほど、登場人物が理解不能な奴ばかりなのである。とりあえずバルセロナでは「逗留先でセックスしませんか?」と言えばスカヨハ級の美女がゲットできるらしいぞ。

もう文化があまりに違いすぎて感情移入なんてできやしないんで、なんだかあんまり楽しめないなぁと思っていたら、忘れた頃にペネロペ・クルスが登場。彼女の風貌を見た瞬間にノックアウトされました。カメラを前にして、くわえタバコをしながらボサボサ頭をかきあげてポーズを決めるシーン、あのシーンがあるだけで、この映画の価値があるんじゃないか?と思えるほど魅力的だった。癇癪の演技も引くくらいお上手。その代わりレベッカ・ホールが消えかけて話は一段とつまらなくなってしまった。

これ一体どう終わりにするんだろう…と思っていたら、急な心変わりでさいならしてしまう。明らかにスカヨハだけを依怙贔屓してやがる。映画的にはあの三角関係をもっと描いてくれれば少しはイイ作品になったんじゃなかろうか。色情的な意味で。今回は苦手なほうのウディ・アレン映画だったけど、役者陣に助けられました。知らない人たちが出ていたら間違いなく爆睡していただろうな。

邦題は合ってるようで合ってない。「それでも恋するウディ・アレン」なら当たらずとも遠からず。(★★★)