「セントアンナの奇跡」

なぜかわからないけど今月は「2週間限定上映」という作品が多い。その1本目が5日から公開の本作「セントアンナの奇跡」で、26日からは美女2人の共演が非常に楽しみな「サンシャイン・クリーニング」。さらに絶対に公開は無いだろうなぁと思っていたジェームズ・マンゴールド監督作「3時10分、決断のとき」が上映される。実に多彩な3本でどれも絶対に観たい。特に26日からの2本はめちゃくちゃ楽しみだ!

で、「セントアンナの奇跡」ですが。コレ、事実を基にしたフィクションだそうで、それを意識したのかわからないけど、なんだかとても雰囲気が掴みにくかったです。黒人歩兵師団たちが一般的に描かれるのでリアル志向なのかな?と思いきや、戦意喪失を促す完全にアメコミ調の放送が流れ始め「あれ?」となる。そう思っていたら今度はやたら可愛い「子ども」が登場して、劇中には微笑ましいくらいの雰囲気が漂う。さらに宗教的な様相も呈しているので、無知なぼくはこの映画がどこへ向かっていくのかサッパリわからなくなってしまい、どうも感情移入できませんでした。

そのせいか163分もの長編なわけだけど、鑑賞後に「これを2時間に納めてくれればなぁ」と思ってしまいました。決して長く感じていたわけじゃないんだけど、雰囲気がコロコロ変わるのでなかなか物語に入り込めず、描かれる「奇跡」もそう言われればそうかもしれないけれど、どうも心に響くようなものには思えませんでした。パルチザンの連中と捕虜の話はこの「奇跡」において重要なエピソードだと思うんだけど、なぜだかここの印象が一番薄い。印象的だったのはスパイク・リーらしい胸を叩いてくるようなメッセージ性の強さだったなぁ。

現実世界において戦争はあってはならないものだけど、決してなくならないものでもある。それは人種差別問題も同様でやっぱりぼくは性悪説を信じざるを得ない事実が多いと思う。でもそういった事実が映画の中でどうあるべきか?ってのは堂々巡りな問題で、個人的にはリアル志向に描いて戦争の凄惨さを伝えるもよし、コミカルな様式美や皮肉を込めて描くもよし、寓意性を高めて映画ならではの娯楽を提供するもよし、という中庸的な意見を持っているわけだけども。てか原作がどんな感じなのか知らないし、この映画には関係ない話ですね(笑)

「限定」という神秘さに惹かれて鑑賞しましたが、これといったサプライズは起きず。ただ「奇跡」って得てして当事者にはわからないものだと思うなぁ。(★★☆)