「しんぼる」

映画館ではたまに「周りが静かすぎて笑えない」という居心地の悪さを味わうことがあるけれど、2年前に公開された「大日本人」ではほぼ全編に渡ってその感覚を味わわされることになり、奇を衒いすぎな感は否めないが楽しい作品であったにも関わらず、鑑賞後にはどっと疲れてしまった、、、。ぼくの中では映画という映像作品を観たというよりも、映画館で最も息苦しかった体験として記憶されていて、好き嫌いで言えば好きな作品ではあるけれど、あの空気を作り出したのが映画本編なのも確かなので「笑えない」ものではあった。

そして2作目である本作「しんぼる」だけども。非常に観念的な映像の連続だった。でもそれはとても映画的なもので、前作に比べたら確実にその手の映画として成立しつつあるように思う。心の中で誰もが次を「連想」できるようにしっかり「物」を映り込ませていて、興味を持続させるようになっている。さながらRPGのような興奮も味わうこともできる。また海外への気配りも見られ、前作より数段「普遍性」が取り込まれていたように思う。ただ、、、どんどんと映画の敷居が上がっていくので、やっぱり置いてけぼりを食らう作品だ。

なんとなくはわかるけどハッキリはわからない。というのが率直な感想なんだけども、鑑賞中ずっと頭の中で回り続けていたワードがあった。それは「松本人志」という名前。過去の映像作品などをほぼ知らないぼくが、松本人志に対して持っているイメージのひとつにその印象的な名前がある。名前というのは人が持っている「シンボル」であって、その人についての大きなイメージに成りうるモノだと思う。印象的な漢字や語呂であれば「名前負け」ということも起きる。「松本人志」という名前とこの映画の内容が、あまりにかけ離れていたので(笑)どうも気になってしまった。鑑賞後にその由来なんかを調べてみたんだけど、何の情報も得られなかったので、本当に書きたいことはもう無いです(笑)

まぁ、そんなことを気に掛けながら観ていたぼくには結局のところ「な、なんなんすかねぇ?」と、映画のテーマ的な部分がやたら晦渋に見えてしまい、もっと旗幟鮮明に描いて欲しかったなぁと思った。その点で言えば、前作「大日本人」のほうが良かった気がしないでもない。もちろんあれは正攻法ではないけれど、きちんとしたメッセージが見て取れたし、何より画作りが愉快だった。まぁ、とにかく「松本人志」を映画の中で表現するとこーゆーのばかりが出来上がるのかもしれない。

ちょっとぼくが持っている物差しでは計りかねます。映画人・松本人志のシンボルとなる作品が「未来」で生まれますように。(★★☆)