「空気人形」

よかった。とにかくよかった!鑑賞後にスーッと深呼吸してみると、なんだかちょっとだけ体が浮いたような気がして、劇場を後にする足取りもなんとなーく軽やかだった。まるで自分の存在を確かめるように歩きながら「あぁ、、、心が洗われるってこういうことなのかぁ、、、」と思い、劇中に満たされていた「浮遊感」にひたりました。

この映画には淀みなく流れる「空気」があって、これに身を任せてみると、もしかしたらこのまま透き通って消え去ってしまうんじゃないか?という感じの不思議な心地良さが味わえました。その流れをつくりだしているのは他でもない純粋無垢な「ドール」を演じ、、、いや「成りきった」と言えるペ・ドゥナ!彼女のことはもともと大好きでこの映画にもかなり期待していたんだけど、まさかここまでとは!「姿」が変わるその瞬間を目撃したぼくは「あぁ、、、心を奪われるってこういうことなのかぁ、、、」と陶酔。本当に飛びっっっっきりのペ・ドゥナでありました。

タイトルにも表れているとおり、彼女を取り巻く人々を描くのではなく、彼女が持ってしまった「心」と彼女を通した「ぼくたちの心」が描かれる。その冷たさと残酷さから目を逸らさないあたりは、是枝監督の映画だなぁと思う。一見ファンタジーだけれど「心」なんてもともと真実味の無いぼんやりしたモノなのだから、この映画は実はすぐそばにある「リアリティー」に溢れているように思う。

「空虚人間」なぼくにはたまらない1本。それにしても体の部位のように代えがきかない「心」って、むつかしいぃ。(★★★★☆)