「3時10分、決断のとき」

これは今年指折りの傑作!非常によく出来た脚本なので、鑑賞中に反芻してみると、嫌でも「そのとき」の光景が思い浮かんでしまう。考えているうちに「そうあってほしくはないけれど、、、そうあるべきだ!」という矛盾した気持ちにさせられてしまい、見事にえぐえぐ泣かされました。この心苦しさは「レスラー」や「グラン・トリノ」でも味わったもので、同じように感じた方々もやっぱりいるみたいだ。今年ベスト当確の2作品と同じように、男に生まれてきたことを誇りに思えるほど心を突き動かされました!

とにかく登場する男たちが魅力的。まずインパクトを残すのはラッセル・クロウが演じたベン・ウェイド(カッコイイ名前だなぁ!)。人の本質を見定めることができる心を射抜くような眼光が素晴らしい。そのベン・ウェイド以上にぼくが惹かれたのは、今回は文句なしの主役と言えるクリスチャン・ベイル演じるダン・エヴァンス(カッコイイ名前だなぁ!)。魅力的な男たちの中心にあるのは紛れもなく彼であって、彼の生き様が登場人物たちを突き動かす。ちっぽけかもしれないけれど、ぼくは男として父親としての彼の姿にこの上ない憧憬を感じた。

おそらくダンとベンも痛いほど味わったであろう「もし違った形で出会っていれば」というやりきれない思い。それだけでも十分魅力的なのに、この映画はさらにウィリアムやチャーリーといった脇役までイイ!ベンに心酔するチャーリーからはやはり悪は悪なのだと痛切に感じつつも、不思議なことに同情が隠せない。過渡期にあるウィリアムは男として人として成長していき、洗練されたその姿は感涙もの。

ベンの「呪われた銃」が如何にしてそう呼ばれるようになったのか?片足を失ったダンの葛藤はどれほど凄まじかったのか?チャーリーの言う「恩」とはどういった顛末だったのか?ウィリアムと弟はその後、どんな人生を送ったのか?と野暮かもしれないけど、観ていてひしひし感じる味わい深さを1本の映画として観たい!と心底思わされてしまいました。ここまで登場人物それぞれに惚れ込んだ映画は久しぶりだ。

「男の人生は、最後で決まる」。その「決断のとき」にこそ、男は至高の輝きを放てるのかもしれない(邦題もカッコイイなぁ!)。(★★★★☆)