「仏陀再誕」

我が栃木県に幸福の科学の総本山がある以上、この映画を無視することはできない。とにかくあからさまにガチな作品なので、内容うんぬんよりも「果たして無事に帰ることができるのか?」といった禍々しさがあり、同日公開の『戦慄迷宮』や『ファイナルデッドサーキット』など比べものにならないスリルを予期せずにはいられない。

どうやら信者の方々もいらしたようで、上映開始前に携帯で劇場の入りを報告しているような会話が聞こえてきた。劇場に入った瞬間、まず「人、多っ!」と思ったのを覚えてるので、たぶん100人近くは入っていたと思うんだけど、同席した友人によれば30人ほどだったと言う。まさか霊的なあれを見てしまったのだろうか。あと途中入退場者がやたら多くて、開始30分あたりまでぞろぞろぞろぞろ出るわ入るわ。ちょっと異様な空間だったのは間違いない。

まあ映画はエル・カンターレエル・カンターレたる所以といった単なる押し売りで究極的につまらないものであった。アニメとしてのクオリティーも冒頭の口パクを観た瞬間に誰もが「悟る」であろう惨憺たるもの。小学生の頃に見せられた交通安全やダメ、ゼッタイ系の映像を思い出した。しかしそんなことはもちろん想定内で、むしろそのあたりの出来が良くても困ってしまうので「どんと来い、超常現象」の精神で耐え忍んでいた。

荒井東作という思わせぶりな名前の敵には原因不明の病を発症させたり破滅的な幻覚を見せる能力があるのだが、その力の使い方がてんでなってない。その荒井と相対するのがとんでもないネーミングの空野太陽という男で彼こそがエル・カンターレその人だ。この二人を主人公が引き合わせるのだが、大袈裟に描いている割には危機感がなく、大層な美辞麗句を並べているだけで物語はかなりショボい。黒幕との東京ドームでの一騎打ちには腹がよじれて失神するかと思った。

「大事なことだから二度言いました」的な演出に思わず吹き出したとき辺りを見渡して安全確保。それ以上のチャレンジはぼくには無理でした。(☆)