DVD「扉をたたく人」

もうすぐアカデミー賞なんちゃらかんちゃら受賞!という金ぴかの文字が劇場で流れる頃ですよね。ぼくはアカデミー賞がけっこう好きで、毎年なんだかんだ言いながら楽しみにしてるんですが、今年行われた第81回アカデミー賞は日本勢の受賞もあってか一味違うカンジに盛り上がれました。そんなに映画を観てない人にでも通じる話だったんで、しばらくの間、二言目には「でぃぱぁちゃあ!」とか言って遊んでましたよ。

今考えればここ最近のアカデミー賞ではなかなか良い選出だったんじゃないかと思うんですが、そう納得できるのはどうしてもノミネート作品が日本公開されてからの夏あたりなんですよね。嫌なのは逆に疑問に思ったりするのもその頃で、まさに後の祭りなんです。まぁ、日本は世界一多くの映画が観れる国らしいし、今年は割とそんな疑問も少なかったんですけど、唯一やっぱり思ってしまったのは「なんで『グラン・トリノ』がないの!?」「なんでイーストウッドに男優賞あげないの!?」ってことでしたね。『グラン・トリノ』はもう本当に素晴らしい、観れたこと自体に感謝したくなる、そんな映画でしたが、なにか選出されなかった理由やエクスキューズがあったのかもしれないけど、ぼくはあんまり知らないので「やっぱりアカデミー賞って…」なんてことも思っちゃったり。

でも、この『扉をたたく人』を観て、その疑問は晴れました。最近大掃除と言わんばかりに今年観れなかった映画をレンタルし始めたんですが、この疑問が晴れたのは良かったです。ぼくはあくまでキャラクター目線でしか見れてないし、英語のさじ加減なんてもちろんわからないけれど、ウォルト・コワルスキーを演じたイーストウッドより、本作で62歳の大学教授ウォルター・ベイルを演じたリチャード・ジェンキンスのほうが演技としてはよかったと思います。まぁ、どちらも素晴らしいんですが、劇中で知人を名乗る男性とものすごくバツが悪そうに話すリチャード・ジェンキンスにがっちり心を掴まれてしまったぼくは、彼が笑うたんびにもううれしくってうれしくって、、、。ジャンベという太鼓のリズムとその音の絶妙な抜け具合も相まって、シリアスな内容にも関わらず、にっこりしながら観てる時間のほうが多かったです。

そんな笑いながら泣ける映画であった本作には、ある種の答えを明示して、言葉にできない感動を味わわせてくれる『グラン・トリノ』とはまた違う素晴らしさがあって、こちらの表現には普段そんなことには無関心なぼくでさえいてもたってもいられなくなりました。単館系の公開からアカデミー賞にまで上り詰めたのも納得できる気がします。思えば『スラムドッグ$ミリオネア』もそうですね。『グラン・トリノ』もそうだったかな?まぁ、なんにせよ、そーゆー上昇思考というか願いみたいなものが成就してほしい(するべき)という声が多かった映画界だったと本作を観て改めて思いましたです。かっこいい映画でありました。

ただただ人の心をたたくこの映画。無学なぼくにもその響きが伝わってきました。(★★★★)