DVD「THIS IS ENGLAND」

いきなり無知なぼくがどーゆー感想を持ち得たのか書いちゃうと、映画が主張するとおり「こんなはずじゃなかった」でありました。いやケン・ローチ作品とかわからないなりに好きなので観てみたんですが、この映画、はじめはどことなくエミール・クストリッツァのような底抜け感を予感させる反体制的な力強さがあって、さらに主人公ショーンの疎外っぷりに青春映画っぽい雰囲気もあったので、これはずるいくらいツボをつかれた!と大興奮できました。それに加え『トレインスポッティング』にいそうなスキンヘッズたち、カエラちゃんが似合いそうなファッションの女性陣まで登場し、テンションはうなぎ登り。ぼくの中2マインドにびんびんくるものがありました。

ところが「突然現れて兄貴風を吹かすやつ」というリアルな人物(いたいた!あーゆーやつ!)が現れると映画の雰囲気が激変。いつ誰がどうなってもおかしくない気まずさが痛いくらい伝わってきて、ぼくは身も心も固まってしまいました。けれど、あの危なっかしさこそ、人と人とを繋ぐモノの「あやふやさ」なんじゃないかとまた違った興味を持たせてもらうことに。だから素晴らしい映画なんです。いや「素晴らしい映画ではある」と思いました。

あくまでぼくが感じたまま、しかも読み間違え感たっぷりの意見を書くと、あーゆー次元の話の結論で「正しい」だとか「正しくない」だとかいう線引きをしてしまうこと自体が、実によろしくない状況であって、そこにショーンみたいな少年が居合わせてしまうのはもっとよろしくないことですよね。んで、それこそがこの映画の主張に繋がっていくんですが、ぼくにはこれが「青春」だとは到底思えなかったです。

言ってしまうと後半は登場人物たちが「人物」にさえ見えなかったです。役者のアップを要所に置いて、どうにかこうにかリアルにしようという演出が逆に嘘くさく感じてしまい、昔から好きでしたのエピソードもあまり必要には思えませんでした。というかぼくが観たかったのは常にショーンの目線なので、うちに帰ってから何をしてどんなこと考えてるのか、みたいのがもう少し欲しかったです。それならあのパンク少女への想いにもっと理由と微笑ましさが生まれたんじゃないでしょうか。とにかく知識もなければ感受性も豊富でないぼくには人物描写がやや記号的に感じました。ラストは当たり前のように素晴らしいんですが、時折挟むロックとそのリズムに合わせた映像とはかけ離れた「ちぐはぐな窮屈感」が拭えず、あまり心地よさはなかったです。

こどもには決して見せられないこの映画。しかし「これが現実」なんだそうな。まったく嫌なもんですね。(★★★☆)