90sレクイエム「BANDAGE バンデイジ」

単なるジャニタレ映画だと思ってたら、べつに普通に観れてしまう地雷もどき映画でありました。小林武史について語る術はもちろんないんですけど、なんだか観てて「現代の日本の音楽に対する憂い」みたいなものを強く感じたなあ。ジャニーズである赤西が演じるナツのボーカルとしての質に対して「すぐ飽きられる」などと言ったり、そのナツがつくった『元気』という曲を売れ線のものにするためにミクスチャーにすることを「ほんとはあのままがいいんだけど」としたり。

かと言ってあの頃は良かった的な鬱陶しさもそんなになくて、むしろブラックジャックになる北乃きいを「キズモノ」としていて、そうなる彼女たちを手ブレカメラを用いて「観察」するようにさえ見えた。さらに完成した『元気』が赤西の声浮きまくりのアンバランスな歌にも関わらずヒットチャート1位を獲得してしまう「現実」や、その『元気』の歌詞があまりに気恥ずかしく聞こえるものの、のちに現れる「ハッピーズ」の歌は歌唱力もそうだけどすんなり自然に聞こえてしまう「感覚」などに何か言いたいことがありそうな気がした。いや深読みだなこりゃ。でもまあ岩井俊二はやっぱり若者の会話づくりが上手い。無駄に敬語になったりするとこ良かったです。

しかし、この映画でぼくが一番注目したのは赤西でもきいちゃんでも物語でもなく「常にスカート」の伊藤歩だ。彼女の作品はちょこっとしか観てないけど、イメージ的には落ち着いた清楚な感じがあって、スーツを着ると『青い鳥』のときの教師みたいになりそうだけど、本作ではメイクきつめのLANDS鬼マネージャーを演じていた。ほとんどのメンバーと口喧嘩をするんだけど、そのたびに見せるイラッとした目つきや「クソガキ!」と怒りを爆発させる叫び声など、全編に渡り伊藤歩の見所が満載でありました。そんなこんなで、はい、良い映画だったんじゃないかと、、、とは言えない理由がふたつ。ひとつは青春映画と言うには音楽以外に彼らをつなぐものがなさすぎるから。

ふたつめは「音楽への愛」を描くなら映画ではなくて、自分のLANDS(大地)である音楽の世界でがんばってほしいと思ったから。はい、なんかよくわかりませんでした。(★★)