お口にチャック「コララインとボタンの魔女 3D」

初声優の榮倉奈々は結構がんばってた。少なくともヘタではなかったよ。けど、この映像がつくりだすあまりに表情豊かなキャラクターの声としては、ちょっと遅れを取るかなと思う。表情の演技についていけてないカンジ。劇団ひとり戸田恵子も黒ネコと魔女のイメージとはちょっと違ってて、あんまり好きになれなかった。まあ違和感ていうほどのもんはなかったんですけど。てか別に声は誰もひどくないです。話題性で充てたわりには十二分に聞かせる声だったと思います。しかしですね、この映画はとにかく映像なんです。映像がすごいんです。個体の動きひとつひとつから全体の画づくりまで本当に素晴らしい。こんな不思議な映像はじめてみた!

と、驚いたのは冒頭の人形づくり場面だけだったりするんだけど(笑)まあ不思議ですよ。ストップモーション+3Dという技術の融合が、なんとも言えないワンダーランドを創りあげていたんじゃないかと。ストップモーションって物凄く「手作り感」が漂うから、観てるとどことなくほっこりした感じを受けるんですよね。丹精込めて仕上げた「達成感」が味わえる。3Dにはその一手一手を飛び越えてしまうような機械的な鋭さ、現実的な立体感をだせる奥行きがあって、そのふたつがストップモーションと相性ばっちりだったりしてビックリ。普通のアニメよりも「人工的」なストップモーションアニメを「超人工的」な3D映像で観る、ってのはなかなか新鮮なものでした。基本的に屋内シーンが多くて、部屋の小物も印象に残ってます。ここまで奥行きを意識させられた映画もはじめてだなあ。

それだけにやっぱりはじめに書いた「声」が鬱陶しく感じました。耳障りなほど下手な声なんてないのに(それが逆にあれなんだけど)、どうしても「いま観てるんだから黙ってて!」と時々聞き流したくなってしまう。まあ要するにぼくはもっと映像「だけ」に集中したかったんですよ。あれだけキャラクターの表情が豊かなら、いっそのことサイレントにしても面白かったかもしれません。てゆーかダコタ・ファニングがよかったよねえ。日本語のメロディじゃないから歌も全然入ってこないし、もろ和訳ですみたいな「ハグ」とか使われると興ざめするし。てか字幕だったら抑揚がわかんないからここまで気にならないはず。

物語はちょこちょこ「魔女宅」+「千と千尋」なカンジで、まあ古典的なもの。3っの試練があまりに肉弾戦すぎるのはどうかと思ったけど、映像が楽しいからイヤじゃない。あ、今日は男2女2という擬似ダブルデート状態で鑑賞したのですが、ぼく以外の全員が3D初体験だったらしく、なんと全員が眼の疲れ、吐き気を訴えるという貧弱な事態になってしまいました(笑)たしかに画面がぐおんぐおんしたり、色彩の変化が忙しくなったりするとこもあったけど。まあ3D映画ってのはまだまだクリアすべき課題というか、改良の余地がたくさんありますよね。ま、ぼくにはメガネの改造しか思い浮かばないけど。

文字どおり目を奪われる斬新な映像世界。創造者たちの「別の」発見を心待ちにしながら、今夜も眠りにつきたいと思います。(★★★)