北川景子という春一番「花のあと」

まず、とても美しい映画でありました。単純に映し出される風光明媚な景色たちに、まあアホみたいだけど「そういえば、日本には四季があったんだなあ」なんて思わされてしまいました。今この時期だからこそ余計にはっとさせられる春の桜。夏が過ぎると秋の紅葉。たどり着くのは冬が彩る銀世界、と、この川のせせらぎみたいな流れが実に心地よかった。あれ?もしかして今ぼくってばクサいコト言ってる?はん!いいんだよクサくて!むしろ心がきれいって言ってもらいたいね!

その心地よさを感じるのは主に冬の場面で、ほんとう物語のペースもゆっくりになるんです。この感じはなんだ?って思っていたら、ある瞬間に気付かされて、ぼくは思わずにっこり「ああ、春が待ち遠しいなあ」と。そういった四季折々の美しさを地に足の着いた感じで撮り上げた本作ですが、映画ならではの醍醐味に「演技」がありますよね。『青い鳥』という素晴らしい映画を撮った中西健二監督の作品ですから、やや全肯定姿勢で観てしまった感はあるんですが…。ぼくは北川景子がだいすきになりました!

男勝りの剣の腕を持つ主人公・以登(いと)を演じるは北川景子。予告編から好印象を持ってましたが、ぼくべつに彼女の顔には興味ないんですよ。出演作品も今まで積極的に見ていたわけでもないし。映画にでてた伊藤歩佐藤めぐみのほうがずっとイイです。でもですね、でもですよ。ハッキリ言ってぼくは惚れました!『ハンサム★スーツ』の北川景子は本物だったんだ!

最初は棒読みな台詞回しに「むむ…」となるにはなったんですが、殺陣を披露するあたりから「むむ…?」と印象が変わってきます。やがて「このコ、できる!」と納得させられると、違和感のあった台詞回しも、聞き慣れない言葉たちが感情表現を邪魔しないように、との意図的な演出に思えてきて、見ていて素晴らしく心地いいものでした。脇を締める役者がいて、細かい作法を取り入れて、真摯に映画を撮りあげる。とても姿勢のいい、気持ちのよい時代劇でありました。

というわけで、今年の「花見のあと」には「恋する女はきれいさー」を熱唱したいと思います!「春」はまだこないけど!(★★★★)