コンティニュー・シネマ「NINE」

まず思ったのが、「なにをしてそんなにイタリアイタリア言ってるのだ?」ってこと。まあ何も知らないぼくが悪いんですけど。あらすじを知らずに観たから冒頭の「言葉は映画を殺す」というくだりからやや身構えさせられることになって、まあとりあえず映画への並大抵じゃない想いがあるんだな、と納得していたんだけど。これ楽曲から衣装から何から何まで「イタリア」と「60年代」にこだわってんじゃない?なんかね、無知なぼくが興奮できる、メロディと一緒に体感することができる、そういう要素が少ないように思いました。

あとこれはサントラ買ってから薄々感付いてたんだけど、豪華女優陣の「競演」がないってのは残念だった。歌の場面がすべてダニエル・デイ=ルイスの空想という設定はすんなり歌に移行できるし、演技にも見応えが生まれる。けど困ったことにほとんどの女優が想像に難しくない「キメすぎ」な役どころで、結果、本人の魅力以上のモノを発揮できてない。「ストリップっぽいペネロペ・クルス」、「ナチュラルメイクのマリオン・コティヤールの二面性」、「お高く止まりつつキュートな仕草を見せるニコール・キッドマン」、というように「言葉で殺す」ことができちゃうんだよなあ。

そんななかケイト・ハドソンファーギーはよかった。「イタリアノッ!!」という締めがとてつもなくカッコイイ『CINEMA ITALIANO』、やたらと耳に残る『BE ITALIAN』。ぶっちゃけこの2曲とマリオン・コティヤールが歌った『TAKE IT ALL』の1メロ?あたり以外の曲は印象薄いです。なんていうか全体的に気合いが入りすぎてる感じ。ペネロペ・クルスジュディ・デンチもつづけてやるべきじゃない。あとニコール・キッドマンもでるのが遅い。構成としても、苦悩→歌→苦悩→歌の繰り返しで、だからこそのラストでもあるんだけど、一旦慣れてしまうと物語と歌どちらかに興味が持っていかれて、結局どっちにも集中できないんだなあ。

ああ、もうこんなに書いちゃったか。なんか不満ばっかりぶっ散らかしたけど、ぼくこの映画、暫定ながら今年首位ですね(笑)もうちっと書くと、踊りの印象が薄いのも、セットがぜんぶ撮影スタジオっぽいこじんまりとした場所だからで、役者陣の豪華さからすると、物足りなさを覚えます。でもそれもこれもぜんぶ映画のため。映画に対する並大抵じゃない想いゆえ。そうであるかぎりはぼくこの映画が好きです。終幕、一同に介する姿とあの一言で見事にやられました。

ようやく撮影開始に至ったグイド・コンティーニ監督の新作『NINE』。ぼくも決意新たにもう一度劇場へ。(★★★★)