マイジョージ、マイクルーニー「マイレージ、マイライフ」

もう20代半ばだと言うのに、社会の社の字も知らないボンクラであるぼくにも、常々心得ているコト、きっと、この考えが変わるときというのは想像もつかない体験をしたときなんだろうな、でも今のところそんな兆しもないし、もしかしたらいつまでも変わらないのかな、そんな風に思っているコトがある。ありふれた考えかもしれないけど「人はそう簡単に変われない」というコトだ。もちろん、だからこそ「変われたとき」に感動はする。するけども、真に迫るものだなと思うのはやっぱり「変われないとき」だ。ここを押さえた映画をぼくはひどく気に入る傾向にあり、去年の『レスラー』なんてズバリそう。

「あれは自分の悪いクセだな」とは思うのになかなか直すことができない。めちゃくちゃ恥ずかしいけど、たとえば飲みの場において。ぼくは酒が回ってくると結構ベラベラしてしまうタチで、特にその場が悩み相談みたいな舞台になってくると、我先にと突撃し、何やらかんやらの受け売り知識をぶちまけては、見かけによらず「まともな意見をくれる」との評価を得ようとする。つまりはついつい上手いコトを言おうとしてしまうのだ。けれど、そのおかげでオイシイ思いをしたことなんて一度もなくって、むしろキチンと相手の目線に立って答えられただろうか?単なる虚栄心でモノを言ってはいないか?そもそも自分だったらその通りにできるのか?などと勝手に考え込んで、そのたびに相手の受け取り方次第だと納得しておいて、結局は自分の自意識過剰っぷりに嫌気が差すという始末。まあ要はぼくってばどうしようもなく面倒くさい人間なんですわ。

マイレージ、マイライフ』はハリウッドのアニキことジョージ・クルーニー演じるリストラ宣告人ライアンが主人公。まずそんな職種があることに驚いたけど、「不況のあおりを受け、年がら年中出張続きの大忙し」という現代を切り取るにしてはあまりにユニークな設定が魅力的。しかし、面白いのは主人公が「冷徹なまでに優雅に仕事をこなす男」ではなくて、そこに気持ち良く身を置くことができないから、出張続きという自分のステータスを利用し「1000万マイルを貯める」ことに徹した、どこか「自分を偽っている男」に見えるところ。

これはライアンだけでなく、バーで出会う知的で魅惑的なアレックス、学校で教わったコトで頭が凝り固まった新入社員ナタリーら女性陣にも言えることで、もしその姿が本当の姿ならば、アレックスは電話をしないだろうし、ナタリーは恋人を追ったりしないはず。そして、ライアンならマイルの使い方が違うはずだ。わかってはいてもなかなか上手くいかない。自分自身の何かがいつも邪魔をするんだ。そんな声を心に抱えていそうなライアンを軽妙にそして見事に演じたジョージ・クルーニーの姿からは、学ぶ、教わる、というよりは、境遇にこそ文字どおり天と地の差があるけれど、笑っちゃうくらい「共感」を覚えることに。さわやかですてき、とても気持ち良く見れる映画でありました。

肯定も否定もない、宙ぶらりんの状態だけれど、人生まだまだこれから。待っているのはもしかしたら上昇気流。(★★★★)