基地外へ告ぐ「第9地区」

正直、絶賛するほど楽しむことはできなかったなあ。序盤にかなりイライラさせられたのが痛いです。中間管理職の主人公ヴィカスがエイリアンたちへ第9地区からの立ち退き命令を伝えて回るんだけど、ここ律儀にお家をトントーンて回るわけ。で、これモキュメンタリーだからさ、誰かが撮影してて、カメラに向かってベラベラベラベラとうっるさいんだわ。うるせーからさっさと感染しろよ!とムカついちゃいました。エイリアンもエイリアンであんな大量破壊兵器を所持してる割にはあまりに人が、じゃなくてエビが良すぎる。

マイケル・ベイが「なんでオレはシャイア・ラブーフをロボに乗せなかったんだ!?」と泣いて悔しがるような激アツ展開は素晴らしいんですが、その後にある家族のコメントが類型的というか何というか・・・。この映画アクションやらドラマやらモキュメンタリーやら色んな要素があるんですけど、どれもこれも取って付けた感があって、結果としてぜんぶつまみ食いみたいな描き方になってる。

一番気に入らないのは、肝心の3年後のコトを「想像にお任せします」って・・・。ここまで人間をバカらしく描いておいといて、エビちゃんたちがどういう判断を下すかを考えないなんて、作品として「逃げ」だと思う。主人公が怯えるのは「このままでは周囲からどんな扱いを受けるか」をよーく知っているから、つまり人間の残忍さ欲深さを知ってるからなんだろうけど。人間描写とエイリアン描写に何もナルホドなトコロがなくって、良いアイデア思い付いたケドそこまで深く描く志も予算もないからギャグ化しちゃおう、みたいなあざとさが見て取れちまったです。まあ、それこそ「陰謀説」ですかね。

たぶん原因はアカデミー賞にノミネートされてたからで、意外にもドラマの部分が濃い作品なんだろうな、って思ってたのがいけないです。『パラノーマル・アクティビティ』なんかは期待してたよりもずっとショボい話だったんですけど、観ている間に気持ち切り替えて予算が無いながらの工夫を楽しめましたけど、あれでもしアカデミー賞にノミネートなんてされてたら気持ちの切り替えできなくて不満に思ったでしょうね。アカデミーがこういうのを推すのはやっぱりヒットしたから?まあ、いいや。とにかくこんなにB級だと思ってなかったんで、面白さの上下にややついていけなかったです。ああ、あとね、血飛沫がカメラにくっつくのキライなんですよ。あれ見るとイラッとくるんですよねえ。うーむ。

人がゴミのように散らばっていく光景を観て爆笑する人。その人を見て冷笑する人。2人を見て嘲笑する人。やっぱ人間って面倒くさいから、せめて映画の中でくらい滅ぶべき。(★★)