不思議の国の在りし日「アリス・イン・ワンダーランド」

そもそも3D映画ってなんで最近になって流行り始めたんだろう?『アバター』はたしかに凄い映像の連発だったけど、「これが最高レベルじゃないよね?」とも思ってしまい、心の底から興奮して驚くことはできなかった。とりあえず去年の公開初日によくわからないイベント感、義務感にかられて観に行ってはみたものの、正直言って弱者である主人公が成長していき、みんなと決起して悪を正す!っていう物語が好きだから楽しめた部分が多くて、観てから時間が経つにつれて、ソレって今まで観てきた映画と同じ楽しみ方だよなあ、と思うようになり、斬新さなんてものはあんまり残ってないように思う。

それでも『アバター』がめちゃくちゃ好きな映画であることに変わりは無いけれど、次に自宅で観る選択肢として「3D」があったとしても、ぼくは間違いなく2Dを選ぶ。てかBDだけども。どうも最近の3D3Dにはイマイチ乗り切れない感があって、奥行きが凄いってのも綺麗だとは思うけど2Dでも十分綺麗だと思う「画」だし、物が飛んでくるのも慣れると鬱陶しいし、そもそも映画がリアルである必要なんてあるのか?と思うし・・・。完全に非現実であるアニメならまだしも、「嘘」である実写の3D映画には一体何を求めればいいのかわからないのれす。

アリス・イン・ワンダーランド』はずいぶん前から色々と宣伝されていたこともあってか、普段映画の話をしないような友達からもこの映画は観たい!との声をよくききました。アリスが可愛いから、ジョニデがでてるから、何か不思議な映像だから、理由は様々だけど、ぼくのような頭が変な人にとっては、この映画を観る気にさせる決定打となったのはやっぱり監督がティム・バートン監督だから。特に熱烈なファンというワケじゃないけど、映像技術の進歩により、その新作を世界中の人が待ちわびて、世界中の人から「期待」を寄せられる監督。となれば観ない手はないんですよね。

しかし、です。おそらくは監督が小さい頃に想像したであろう「記憶」の世界。「6っのありえないこと」をいとも簡単に映像化したときに感じてしまう「想像力」の入り込む余地の無さ。驚異的な映像技術で形作られた世界からは、どこか寂しげで無機質な印象を受けます。逆に「CGでありえないこと」っていくつあるんだろう、なんてコトを考えるとそれこそ想像できません。魅力的な小説や漫画を映像化してしまったときに感じる脱力感、そして痛々しさ。劇中で何度も行われる「目潰し」を観ながらそんな思いに苛まれてしまいました。物語もあのたまらない「デカさ」に寄り添うべきだよなあ・・・。

夢の世界へ手招きすることなく、現実との貿易を選ぶ本作。もう映画に「不思議」はないのかも・・・そ、そんなことないよぅ!(★★)