素直になれなくてもいい「17歳の肖像」

さいたまは川口、川口はさいたまへ行って参りました。行き先さえ決めてしまえば、その道のりはあんまり調べないという無計画なぼくは、とりあえず川口駅から徒歩8分の場所にあるアリオ川口という建物に行けばキャリー・マリガンに見惚れるコトができるんだな、との想いだけ胸につめていつものごとく楽観的にゆきました。まあ当たり前のように何度か「違う!」と思って引き返したりしたんですが、わりと簡単に着きましたよ。なんてったってSOGOのSYOROの警備員さんが「この先の信号3っ目を左!」と慣れた言い回しで教えてくれましたから。キャリー・マリガン、他力本願。

いや本当にすみません。反省してます。別に大して悪いことじゃないけれど、これからはきちんと道調べます。計画を立てます。うそです。次回の遠出は文学フリマの予定ですがもう道忘れました。でも1回行ったから何とかなる、それに人いっぱいいるだろうから付いていけば平気平気。他力本願、キャリー・マリガン。え?何?つまらない?このギャグが?またまた。ギャグについても謝れだなんてひどいじゃないですか。そりゃあイギリスの超新星女優をカスみたいなギャグの出汁にするセンスは、それこそカスですよ。でもねえ…最近どうーも素直になれなくて…。

映画『17歳の肖像』の原題は『AN EDUCATION』。意味は「教育」。17歳になろうとしているお澄ましJKが、ある日チェロのように甘い音色の出会いをして、様々な経験をしていくなかで何を想い何を感じるのか、っていう物語だったんですが、映画の内容を語るときによく「切り取る」という表現を使いますよね。多くの人に思い当たる節があるような機微を描いたりして共感を呼ぶアレです。本作は「17歳」それも「女性」にフォーカス、しかも時代設定は半世紀前。これを踏まえるとやや特定層に向けられた作品なのかな、とも思ったんですが、やはり物は試し。実に普遍的で実に等身大、お年頃映画の決定版とも言える素敵な作品でありました。

疑問を持つことは良い事だと言うのにその疑問にはあまり答えてくれない。個性を持つことは良い事だと言うのに皆と同じようにとルールを課す。学校とはそんな不思議な場所です。もし、学校生活でうんざりしたことなんて一度もない、とかなんとか言う人がいたら、その人には面白い歴史があるかもしれません。利発で美人な主人公ジェニーは当然そんな不思議には反発し、「わたしと社会の隙間」を擦り抜けようとします。でも、夢に描いた絵画のようなひとときを盗み見るのはいけない。危ぶむ年頃の17歳に「危険」は魅力的に映るものだけど、危ない橋を渡るのはどうやったって危ないのだ。愚かなのは恥ずかしいことじゃない。「人生大学」の教授なんてそうそういないんだから、同じ目線に立ってみればいい。行けばわかるさ馬鹿になれ!

向き合って見つめ合い、なんとか折り合いをつけてみる。夢見る少年少女だったじぶんも今では誇らしい。(★★★★★)