無限の彼方へ撃て、約束の物語を「トイ・ストーリー3」

トイ・ストーリー』は「想像力」で満たされた物語だ。クリスマス、誕生日、あのときそのとき・・・もしかしてオモチャはこんなことを考えていたんじゃないだろうか?という大人たちのまるで子どものような「想像」ですべてが描かれている。オモチャ達はただ単に口の聞ける物体としての擬人化に終わっておらず、全員がまぎれもなくオモチャとして生きているのが素晴らしく、それを自覚していく姿と自分たちの居場所を見付けだすのが『1』で描かれていたお話。

『2』になると子どもたちの遊びが多様化するなかで、オモチャの存在意義とは?といったところまで踏み込む。「大人の事情」に振り回される姿とオモチャの在るべき場所を模索する話だが、やはりオモチャの行き着く先は同じ、子どもたちのもとだ。しかし、その子どもたちが子どもではなくなったら?オモチャとは所詮消耗品に過ぎないのか?ついに訪れた「そのとき」というテーマに真っ正面に向き合い、これ以上ない答えを明示するミラクル大傑作が『トイ・ストーリー3』である。

ウッディたちはアンディが大人になってもいつの日かアンディの子どもが自分たちと遊んでくれる、と信じている。だが、オモチャの役目とはやはり子どもたちの手元にあってこそ。屋根裏に押し込まれて待つ選択肢もあっただろう、しかし、ウッディは初めて現実世界に干渉し、アンディ自身に自分たちの運命を託す。そしてその答えが描かれたとき『トイ・ストーリー』とはウッディら仲間たちがオモチャとして「すべての子どもたちへ」と成長していく物語であると同時にアンディが子どもから大人へと成長していく物語でもあったと気付かされる。

真の意味で物語の完結を迎えた瞬間はほんとうに心がえぐえぐ打ち震えて、声に出して泣きたいくらい涙がいっぱいでて、これから先何十年も多くのひとに感動を与えるんだろうな、と嬉しくてたまらなくなった。もし、オモチャたちが人知れず会議なんか開いているなら、ぼくたちと同じように嬉しい思いを味わっているだろうし、想像力豊かな子どもたちもやがて大人になったとき再度この物語に触れて深い感動を覚えるのだろう。こんなにもわかりやすく素敵なメッセージを伝えてしまうのは『トイ・ストーリー』で描いたコトとは、この物語に携わった人々が常日頃当たり前のように願っているコトだからだろう。願い、希望、夢。そんな想いでかたどられた圧倒的感動を放つ本作はほとんど無限に近い可能性を感じさせてくれる。

この映画があれば、世界はいくぶん平和。『トイ・ストーリー』に感謝永遠に〜!(★★★★★)