ブランドと偏見「借りぐらしのアリエッティ」

夏休みということもあって、本編開始前いつものトトロが映るとキッズたちがわーきゃー大騒ぎ。思わずニンマリしてしまう良い雰囲気での鑑賞となりました。が、この映画あんまり面白くなかった。唯一良かったのは主人公アリエッティがぼく好みのおてんば娘だったこと。ただ、おてんば娘とは言っても「人間に見られてはいけない」という小人のルールに縛られて、そして同世代の仲間がいないため感情を押し殺し気味でやや落ち着き過ぎ。彼女にはもっとたくさんの魅力がありそうなのに物語がそれを見せてくれませんでした。

他の生き物を「狩る」ことで生きてきた人間と、その人間たちから物を「借りる」ことで生きてきた小人。その文化のコミュニケーション不全を描いた物語。しかしそのコミュニケーション不全には明らかな「偏見」がありました。久しぶりに映画観ながらガックリきたんですが、その偏見がでたのは心臓病を患った少年・翔がアリエッティと初めて面と向かって会話をする場面。まあフツーに小人と仲良くなろうとでもするかと思ったら「きみたちは滅びゆく種族なんだよ」と一蹴!ちょwおまwwwで頭がいっぱいになりましたよ!

心臓病により死への諦観があることはわかるんですけど、ぼくこーゆー「病気」や「家庭環境」などの設定を理由にして、物語上の都合を合わせるためのセリフを吐く人物って映画の中で一番嫌いなパーツなんですよ。「心臓病で家庭環境がアレならば小人を見てこう言ってもおかしくないだろう」ってのは想像力の賜物ではなく単なる偏見。「設定」で済ましてしまってはその登場人物の人となりがわからない。だからセリフに違和感がでる。アリエッティら小人の生活描写をチンタラ描く前にまず少年がどんな少年なのか?から描かないと。活力を失っていた少年が婆さんや家政婦から小人の話をきいて心動かす、という始まりのほうが絶対イイですよ。

最後もアリエッティが成長したみたいになってたけど、ぼくにはいわゆる成長した「げ」な感じにしか見えませんでした。彼女が揺れ動いた理由といえば少年への「同情」でしかなく、しかも別れの後すぐにスピラーたちと「共に」新しい世界へ旅立ってしまっている。一体何をしたかったのかサッパリです。この映画がキチンと描けたのは何もしてない主のおばあちゃんのホッコリした気持ち、と、小人の男の子スピラーのベタなボーイミーツガールのみ。今はまだスクリーンいっぱいにトトロが映れば心躍るけど、ぼくの後ろで喜んでた手のひらサイズの女の子が大人になった頃、そのときは果たしてどうなっているのか?ぼくだって子どもと一緒にジブリ映画観たいんだから頼みますよホント!!

今はまだ宮崎駿がつくった過去の栄光の借りぐらし。スタジオジブリの新天地はいつ見つかる。(★★)