起立、礼、着席…しない!「レポゼッション・メン」

車のローンが払えないなら車を回収する。家のローンが払えないなら家を回収する。じゃあ人工臓器のローンが払えないなら?…オレたちの出番だ!というなかなかブッ飛んだ世界観の近未来SFアクション。本編内の字幕が「回収屋=レポメン」となっていたので、あの車でブ〜ンしてしまう『レポメン』とカブるのを避けて『レポゼッション・メン』にしたのかな?と思っていたら、物語が進むにつれ、これはレポゼッションでなければ!と納得しました。

意味間違ってたら大変赤面なんですが、レポゼッション=居場所を取り戻す、であるならば、この映画の登場人物は全員が何かを失っていて、それを取り戻すために戦う。つまり人生のリトライをしているんです。主人公ジュード・ロウは心臓と妻、息子を失っている。同行する女性は臓器いっぱいと生きる意欲を。そして、恐ろしいのがジュード・ロウと共に凄腕回収屋として活躍していたフォレスト・ウィテカー。彼はジュード・ロウという最高の相棒を失っています。

一番の見せ場はまるで『ウォッチメン』におけるVS囚人シーンのような、ジュード・ロウが人工臓器本社社員たちとガチンコ勝負する場面。彼らもまた自分たちの居場所を守るため戦います。この物語が面白いのは、一昔前だったら「人間性を取り戻す」とか言わせているであろう主人公が完全に“異分子”とされているトコ。

ラストのネタバレになりますが、孤軍奮闘、勝利を目指した主人公は「夢を見続けさせる装置」なる圧倒的な現実に回収=レポされてしまいます。この終わり方はエンタテイメントと言うには程遠く、しかし、フォレスト・ウィテカーの「友達想い」な一面がバッドエンドとするにはどこか邪魔。物凄くモヤモヤした終わり方をするんですが、結局ね、物語上損をしてないのは大人しく言うこと聞いて働いてる人たち!いつだってルールってやつが人を良くもし悪くもする。でもね、その人たちが一番「つくりもの」みたいに描かれてる。本作で言いたいのはそこなんじゃないかと。

とても歪んでるけどソッポ向くこともできない作品。とびっきりのスマイルを見せながら臓器を取り出す少女や母親に向けて発砲する少年。歪んだ現実に居場所はにゃいのかにゃ。(★★★)