愛についての欽ちゃんレポート『Bootleg vol.2 Love Story』

昨年12月に文学フリマにて購入した映画同人誌。ようやく読み終えました。3号目となるBootleg。テーマは「愛」。

※画像、超高画質ハイメガピクセルで申し訳ありません。
〜目次〜
・恋愛映画狂想曲『(500)日のサマー』大解体
・耐えしのべ。親と一緒に セックスシーン
・出張!とかくめも
・殺したいほどI♥You 妻殺し映画の系譜
・恋愛やめますか?それとも人間やめますか?トリュフォーと愛の狂人たち
・「エマニエル夫人」は乗りもの映画である。〜もちろん二重の意味において〜
ケータイ小説の愛
・B級ホラーアクション界のクリスチャン・ラッセン野郎レニー・ハーリンを再発見せよ!!
・Love of The DEAD ジョージ・A・ロメロとゾンビ、愛憎の世紀
・欽ちゃんすら救えないようなワスらの愛で地球が救えるというのか!?


タイトルだけ書き出すと何が何だかわからないことになってますが、そこはBootlegクオリティ。それぞれの方がそれぞれの視点でズバり「愛」を語っていて充実の内容。加えて、タイトルに「ラブストーリー」とあるとおり、コラムひとつひとつがどこか物語のように繋がっていると感じ、そこがとても面白かったです。まあ、かなり無理矢理の深読みなんですけど。

「覚悟せよ!」の号令とともに幕を開ける本書。トップバッターは雨宮まみ氏、峰なゆかによる映画『(500)日のサマー』についての対談をインタビュアー大熊信氏でお送りしたもの。女神お二人のごもっともな意見が書かれていてかなり縮こまりながら読み進めることとなります。中途、ある言葉が二人の逆鱗に触れ、あわや生命の危機にさらされる大熊氏ですが、ぼくは咄嗟に「それはまずい!!」と思えたので、よかった、たぶんぼくは怒られずに済んだな、などと溜飲をアレする思いでありました。

対談終了後、Bootleg編集長侍功夫氏による『(500)日のサマー』解析が行われています。スパイク・ジョーンズ監督作『アダプテーション』との比較で『(500)日のサマー』がどう画期的だったか。これはチョットむずかしかったので何となく「なるほど!」と思っておきましたです。(すみません・・・)

続いては深町秋生によるおっぱいのお話。さまざまな映画にあるラブシーンの紹介と、やらしい場面を親と一緒に見るのはキツいぜ、といった男であれば誰しもが通ったであろう道について書かれています。『(500)日〜対談』ではじまり、映画さながら過去へ遡ってゆくのです。しかもできれば思い出したくない過去へと。ぼく自身も何の映画だったかわからないのですが、小学校低学年の頃、たしか日曜の昼下がりにテレビをつけてみたら、ヒゲモジャメキシカン風の男が目隠し&ディルドー固めの女性に「しゃぶれぇい」とナニを押し付ける場面が映り、なんだこれはと思いながらも目が離せず、その後の展開に集中しすぎてうっかり音を小さくするのを忘れていたことに気づきリモコンを手にしたが時すでに遅し・・・テレビから発せられる女性の金切り声を不審に思った母が部屋に登場しあえなく御用・・・と。必死で言い訳した覚えがありますが、必死だったのでどう言い訳したのか覚えておりませんです。

ここで永岡ひとみ氏による恒例イラストコーナー「出張!とかくめも」。イヤよイヤよも好きのうちというわけで俳優ニコラス・ケイジの主に顔面についてのデータが書かれてあります。顔面図。当たり前ですがすごく似てます。深町先生のコラムを読む前に確実に目に入るのでゲッ!ってなります。見れば見るほど不思議な顔ですね。

続きましては「人喰い映画」というジャンルを開拓していったとみさわ昭仁による「妻殺し映画」のお話。視点をしぼってジャンルとして映画を楽しむという見方はすごく面白いですよね。深町先生の項では愛の持つバイオレンス性が書かれていましたが、本項ではついに人を殺してしまいます。愛する人であったはずの妻を何故殺してしまうのか、また、その裏にある人間性とは?というテーマで作品を紹介しています。とみさわさんの文章は執筆陣のなかでも随一の読みやすさでとても好き。笑ったのは三浦和義や寺尾聡の画像が「それを今言わないでも(笑)」というタイミングで組み込まれてるところですね。

出張!とかくめも。その2。たしかにニコケイ(と、呼ぶのは初めて/笑)はおかしな服ばかり着ています・・・。とか言う前に『ワイルド・アット・ハート』を見ていないぼくなのでした。見なきゃ!

さて、どうやら愛ってやつは人を狂わせる何かがあるらしい、というところに辿り着いてのお次は古澤健によるフランソワ・トリュフォー監督のお話。ここらが本書のひとつの山場で、愛についての問いかけがより深いものとなっていきます。残念ながらぼくはフランソワ・トリュフォー監督の作品をひとっつも見ていないので、正直読み進めるのがキツいと思う瞬間もありましたが、古澤監督の映画への思いがバシバシ伝わってくるので楽しく読めました。何かちょっとした達成感さえ味わえる読み応えでありました。そして、Bootlegはその勢いに乗っかって速水健朗の「エマニエル夫人」評に乗っかっていきます。おフザケにも思えるタイトルですが、社会情勢などの観点からエマニエル夫人作品を読み解いていくので結構真面目なカンジ。最後には運命的でさえあるところに着地します。

出張!とかくめも。その3。たしかにニコケイはモテている・・・。エマニエル夫人も体張ってたけどニコケイとラブシーンする女優さんも頑張ってるよな・・・。

フレンチな愛を語りとおして舞台は日本へ。日本のラブストーリーといえばケータイ小説ということで破壊屋ギッチョ氏によるケータイ小説の愛です。『恋空』のからあげ評にはぼくも大爆笑させてもらい、飲みの席で女友達に一説ぶったとかぶたないとか、そんなのはいいとして、ケータイ小説の映画って本当にショボくてマニアックなの多いですよね。ラクにつくって大儲けを狙ったがための現象であることがよくわかります。時代を切り取ることができる映画としては、一本くらい後世に残る傑作が生まれてもよかった、本当にそう思います。ちょっと切ない気持ちにさせられてしまいましたね。ありがとうケータイ小説。さようならケータイ小説。結局1冊も読まなかったよね。

出張!とかくめも。その4。人外コーナーです。ニコケイ声優もやってたんだ・・・まあだから何ってこともないけど。それはそうとしてさっき鏡を見てきたらどうやらぼくのホホにもほくろがあるのですがダメ・・・ですよねわかります。

気がつけばあなたがいた。全然気がつかなかったわけですが、真魚八重子による映画監督レニー・ハーリン評。彼が如何に愛すべき映画監督であるかについて書かれています。同じ監督だとは気づかずにほとんどの作品を見てしまっていて、なんだか申し訳ない気持ちにさせられたりしなかったり・・・。ともかく影に隠れた映画監督に光を当てるのは異常な愛といえるでしょう(いわせてください)。ハーリン記事のあとにテルオ・チルドレンと命名された「異常性愛路線」なるまがまがしき映画たちが紹介され、いよいよBootlegのラブストーリーはクラマックスを迎えます。あ、『ディープ・ブルー』は最高に楽しんだ記憶があるのでレニー・ハーリン監督作品として見返す楽しみができました。

さまざまな場所に存在する愛を経て、編集長侍功夫によるロメロ監督評。これは本当にすごいとしか言いようがありません。そもそもぼくはロメロ作品はゾンビものだけとか思ってた不届き者なので、もうこれからは口が裂けても得意げにロメロとか呼び捨てにできませんね。直近の3作品は全て最高に楽しめたのですが、ゾンビを不思議な扱いするんだなあ、とかぼんやり思っていた謎が一気に解けた感じです。この物語がどういった形に帰結するかはこれからのジョージ・A・ロメロ作品が証明するはずなので、また、人生に楽しみが増えましたね。観客として死ねない理由ができましたね、と。満足感と余韻に浸りながら本を閉じようとしたら、間髪入れずに現れるマトモ亭スロウストン氏。寅さんとマイナス10円の乳首、そして武田鉄也を語り倒したマトモ亭氏の次のターゲットは欽ちゃんである。相変わらずの芸風で繰り広げられる欽ちゃん映画の歴史。そんな映画あったんだ・・・と眉をひそめながら読んでいると、おやどこかで見た名前が・・・。やっぱり容疑者はアナタなのかというオチがつき、初めて特定の人物への悪口をなしに終えるBootleg。毎号毎号ウルトラCでありつづけるマトモ亭氏は本当にすごい。結局、辿り着いたのは「欽ちゃんに愛の手を!」というわけのわからない場所だったけれど、じっくり楽しく読めました。なんだかヘンに紹介しただけで感想とは言えないかもですが、今号も面白かったです。3冊のなかで一番好きかもしれません。というわけで、次号もそのまた次号も楽しみだなと思った次第であります!ほれでは。