あなたになら言える歪なこと『スプライス』

『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督作。それにしてもややこしい名前の監督さんですねえ。逆に忘れられなそうではありますが、そんな名前だから厄介な作品ばっかつくってるんですかね。こわいですねえ。

タイトルの『splice』には“結合”という意味があるそうですが、これには人間と何やらかんやらの動物の遺伝子を結合させるというそのまんまの意味と、水陸両用の肺を持つことや「男性」と「女性」など、相反するものの「結合体」であるとの意味があるのだと思います。

そんな新種の生命体をつくりだすことに成功した二人の科学者クライブ(asエイドリアン・ブロディ)とエルサ(asサラ・ポーリー)。二人にはおそらく未婚ではあるものの生涯の伴侶としてお互いにある程度の信頼を抱いているというような雰囲気があります。しかし、男女二人ましてやカップルを主人公にした物語は、多くの場合男性側に重きが置かれているものと思いますが、映画のテーマのひとつに「生み出すこと」があることや、序盤にある「引っ越し」の会話において、「子供を産むのは女である私よ?だから私のいうことをきいてっ」との会話があることから、その主導権はあくまでも女性側にあるのだと感じられたところが面白かったです。

その女性エルサを演じたサラ・ポーリーには『アウェイ・フロム・ハー』という監督作品があって、その内容が20代の女性が監督したとはとても思えないほど才気と狂気がないまぜになったようなもので、そう感じちゃったもんだからボクは彼女のことをどうしても訝しげに見てしまい、映画の物語自体からは、ガンの治療薬開発につながる新種の生命体を生み出すことに成功したが、「理想」を追い求めているのにもかかわらず、どうしても「倫理」という一線を越えなければならないとのジレンマがあり、最終的にはその行く末を企業にほっぽり出して“ヒト”としての限界を知る、みたいなコトを思ったんですが、ボクが楽しく思っちゃたのは「娘にキレて尻尾ちょん切るサラ・ポーリー(チンコの暗喩)」の場面のあまりの豹変ぶりや、「絶体絶命のピンチには愛する男も見捨てるサラ・ポーリー(主導権はあたし)」というあまりに身勝手なオブザデッドっぷりなのでありました。はい、そんなこんなでややこしくて面白く見れました。