となりのジブリ『コクリコ坂から』

スタジオジブリ最新作。結論からいえばお話のとっちらかった駄作だ。雰囲気のいい音楽と馴染みあるジブリのアニメーションから受ける印象は良いのだけど、如何せんそこにドラマが流れていない。宮崎吾朗監督が「どう描くか」ではなく「何を描くか」という注目点も、前作と同様にそのあまりの自己言及性に辟易とさせられるものだった。

「ハヤオとゴロー」という観点はなるべく排除しての鑑賞を意識していたつもりが、父へのメッセージとして旗を掲げる少女、実の父親の存在に葛藤する少年、その二人の恋。露骨なまでに「親子で物語る」ことを意識しまくったモノで、さらにいえば、伝統ある建築物を学生たちが決起して「守る」ことや大人側に認めてもらおうと奮闘する子どもたちなど、これでもかというほど「スタジオジブリのためにあくせくとする人々」なるものがいちいちチラついて単純なエンターテインメントとしてまったく楽しめないのだ。

85年生まれのボクにとってジブリは生まれて此の方ずっと目にしてきているモノで、25年間でジブリという言葉をきかなかった年は絶対にない。毎年必ずどれかの作品は見ているし、そのたびにジブリベストはあれだこれだ言って騒ぐのが最高に楽しい。テレビで放映されれば何度でも食い入るように見るし、都会にでたときは絶対に「人がゴミのようだ!」と心の中で叫ばずにはいられない。これ以上はない身近なもの、一生見続けるものだと心の底から思える。

そんなボクがジブリの前作『借りぐらしのアリエッティ』と本作『コクリコ坂から』を見て思ったのは「もっと観客に寄り添った作品にしてほしい」ということ。ジブリってその由来どおり、大人と子供どちらもが持ち合わせている想像の翼と童心を羽ばたかせてくれる素晴らしい作品で、誰にでも伝わる娯楽性が高いものだと思う。アリエッティもコクリコもある場面ではジブリらしい躍動感を感じることはあるけども、結局は「今後のジブリ」というナーバスなテーマを描いてしまっている。そのことを「見守る」というスタンスが取れるか否かが評価の分かれ道だとは思うけれど、キキと結婚したい!そなたは人間だ!とか思っているボクなんかは宮崎吾朗を「立派になったな!」と讃える立場には当然居ないので、次回作は「空」の話にしてくれないかな、とだけ思っておくことに。コクリコ坂から・・・ジブリはやっぱこうでなくっちゃ!と思える日を待っている。終。