きっとオールライト『キッズ・オールライト』

リサ・チョロデンコ監督作品。母2人に長女長男というとても複雑な家族構成の一家の物語ですが、差し当たる問題は一般家庭と同じ。なにかの変化をきっかけにぶつかり合ってしまったとき、背を向けず、ふたたびどう向き合うか?という物語。

タイトルの『キッズ・オールライト(子供たちは大丈夫)』には、劇中の子供ジョニ(asミア・ワシコウスカ)とレイザー(asジョシュ・ハッチャーソン)だけではなく、「誰かの子ども」である同姓カップルのニック(asアネット・ベニング)とジュールス(asジュリアン・ムーア)への素晴らしい賛美も感じます。むしろそっちのほうが強め。やっとの思いでスタートラインに立つ様子は、まだまだ大変かもしれないけど、彼ら彼女たちなら大丈夫と思わせてもらえる本年度ベストクラスの爽やかさがありました。

おもしろかったのはキャラクターすべてに適度な設定と描写がなされているところ。また、そのいやらしくないカンジが心地よかったです。医師のニックは家族関係を修復する役目。家族に新しい血が入ることを拒みます。それは「自分たち」で解決する問題だからですね。造園帥のジュールスは景観デザインのモットーに「周囲にうまくとけこむように」というものがあります。それは至極まっとうな思いだし、あの状況で気持ちが浮ついてしまうのは仕方が無い。ただ、過ちは過ち。そして、その大きさは本人もわかっているという心情の裏返しが、庭師として雇っていたセニョーラのおじさんへの酷い仕打ちとなります。あのおじさん、可哀相だったけど、「花が好きなんです・・・!」だなんて可愛らしく言えるんだから、きっと大丈夫です。

厳格なニックの娘ジョニはスクラブルというワードパズルゲームで気になる男の子とコミュニケーションを取ります。厳格な父/母であるニックによる抑圧か親譲りの不器用さがうかがえます。劇中の一大イベントはそんな彼女の大学進学ですが、あんなチューをできる彼女なら心配ご無用ですね。いろいろヤラかしてしまうジュールスの息子レイザーは「周りに溶け込む」こと、バスケなどのチームプレイを好みます。ちょうど思春期を迎えていて家族に対して疑問を抱いていた彼ですが、なんとなく付き合っていた悪友との縁をバッサリ切れる男らしさ/抱き合う女性陣を一歩引いて見守るような眼差しにはすがすがしい成長を感じますね。あれ、素晴らしかった!そんなレイザーが欲する男らしさの塊である生物学上の父ポール(asマーク・ラファロ)も、この経験からきっと素敵な家族を築くはずですよね。まあ、とにかく言いたいのはタイトルです。「型にはまらない家族」ではなく「家族に型なんていらない」というちょっとだけ視点をズラすと見えてくる輝き。大好きこの映画!