こんなこと考えた奴は一体どこのドイt(ry『ムカデ人間』(2010)


昨年見ていたら間違いなくベスト10入り!手に汗にぎる緊張感と頭が沸騰しそうになるくらいのバカバカしさを同時に感じる傑作でありました。「人間のお顔とお尻をくっつければ、ムカデ人間の出来上がりなのだ!!」という、一体どんな切り口でツッコみを入れればそんなことを言う人を改心させられるのかボクにはまったくわからないんですが、そのアイデアだけに終わっていないのが、こんな設定にも関わらず大してエロくもなければグロくもない、つまり、過剰なエログロを抜いて余った時間に「理不尽さ」というリアリティーを書き加えていることとそのセンスが、映画の質を一つか二つ上げているんだと思います。

ムカデ人間なるものを夢見るヨーゼフ・ハイター博士と、そのムカデ人間の先頭をやらされる大阪のチンピラ/名をカツロー。この二人のやり取りがメインであり見所ではありますが、一応、物語としての主人公は、ムカデ人間の真ん中を任されることになるリンジーなんですね。もちろん、全員が被害者なんですけれど、とりわけドラマチックな展開はというと彼女ばかりに降りかかっているんです。

合体させられる直前に千載一遇のチャンスを得るのは彼女だし、その後、ムカデ人間の真ん中を任されるという大変な責め苦を味わうのも彼女です。列の真ん中にいることで降りかかる先頭の人の排泄物というムカデ人間ならではの「ツラさ」には、後ろにくっついている友達に配慮しての「便秘」という細かい芸でもって彼女だけに追い討ちがかかっています。唯一、前後の人とコンタクトが取れる位置ではあるものの、前の男は言葉が通じないわ、後ろの友達はグロッキーで手を握いでいるだけだわで、事態に光明は差しません。ラストの状況もリンジーからすれば「え!?どうしたの急に!?何を言ってるの!?え!?」という不可解さだったハズ。これらのツボの外し方というか不都合っぷりとに、舞台がドイツだということも手伝って『ファニーゲーム』(1997)的なものを感じたりして、実にナイスアプローチな映画だと思いました。ケッサクであり傑作。はい。ところが、何やら続編ではタガが外れたように張り切っているそうなので、そちらにも期待でありますね。おわり。