俺は下町生まれ風俗育ち『苦役列車』

苦役列車』感想。

とってもおもしろかったです。というか、好みですね。肌に合いました。主人公の北町くん(as森山未來)は、「夢」を思い描くような気骨のない中卒日雇い系男子。何の葛藤もなく二言目には性欲をさらけだしちゃうので、『モテキ』(2011)のようにチャンスが勝手に好転してくれるワケもなく、むしろチャンスをピンチに変えてしまうほどのダメ人間です。

そんな彼も最初からダメだったわけではなく、父親が性犯罪で逮捕されて、そのせいで一家夜逃げをかましてからが不幸一辺倒みたいなんですね。でも、そこまで落っこちてまだ生き延びてるってのはラッキーだと思うんです。人付き合いがとにかくダメだし、どんなに痛い目にあっても反省はしない。あげくの果てにおそらく心のどこかで「俺はわるくない」とさえ思ってしまっている。

そうして、最後の最後まで痛い目にあった主人公は、文字通り丸裸になって、救いようがなくなった自分に残された最後の可能性へと向かっていくんですね。その一瞬にあった純粋な躍動感とそこへ向かうまでの森山未來の憑依したような演技が素晴らしい映画だったと思います。おわり。