愛の突然変異『へんげ』

『へんげ』感想。

噂通りの傑作でありました。ちょうど丑三つどきくらいに見ていたんですが、見終わってすぐに「いちにーヘンゲリア!にーにーヘンゲリア!」などという言葉を発し狂喜するほど面白かったですね。妻役・森田亜紀さんはなんだかクセになるキレイさです。あと、パッケージの夫役・相澤一成さんの叫ぶ姿がドニー・イェンに見えて仕方がないですね。

本編54分のうち50分くらいをラストのための助走に費やしていて、まずはその助走にある禍々しさが素晴らしいです。「変貌していく夫の肉体」とそれを受けて「変化せざるをえない妻の精神」という描き方をしていて、映画の進行と共に見ているコチラも揺さぶられます。

「世界の総意」というけったいな言葉を引き金にして描かれるその世界での爆発力からは、これぞ映画の醍醐味といった爽快感を味わうと同時に、映画が「その世界を何分割するか?」という物語へと変遷していたことに気付かされます。夫と共にいることへの不安/恐怖/決意/安堵/そして、この瞬間のために映画のすべてはあったのだと思わせてもらえる感情の爆発に愛しさと切なさと心強さを感じ、たっぷり満たされたのでありました。大畑監督の長編が早く見たい!おわり。