『フライト』乗り合わせる機長の人生

『フライト』感想。

ロバート・ゼメキス監督12年振りの実写映画作品。面白かったです!最初からクライマックスと言わんばかりに描かれる“奇跡の着陸”。機体を水平に戻すため行われた背面飛行におけるパニック描写はすっごくこわかったです。そして、そこで抱くこわさは、大胆且つ冷静な対応をするウィップ・ウィトカー機長(asデンゼル・ワシントン)へのプロフェッショナル感への理解につながっていき、開始10分でバッチリ映画にのめり込めるんですねぇ。あの状況で「息子の名前は?メッセージを。声が残る。」とかまで頭が回るなんて…!被害を最小限に抑えた着陸のその後、ウィトカーの人生の乱高下に観客として共に乗り合わせることとなります。

フライトの離着陸と同じように、映画は一度も話が前後しません。「ウィトカーの過去である離婚」や「アルコールが検出された」などの「結果」から先に語られて、その中身はあとになって描かれるんですね。これが面白い!心構えなどさせてくれない人生の唐突さを味わえました。

その象徴として、病院で出会うガン患者(asジェームズ・バッジ・デール)がいます。彼は、病院の階段で隠れて一服をするウィトカーとニコール(asケリー・ライリー)へ「あの事故は、この場所で彼女と出会うためのものだったんだ」という助言をしますが、ウィトカーはその達観に従えません。ガン患者は悪いことを言ったわけではありませんが、その実行ではウィトカーの過去は変わりません。この辺りから映画には「依存症克服」という要素も表れてくるものの、反するように原因究明や責任追及から逃げ続けるウィトカーは自堕落を繰り返します。そして、公聴会になってようやく辿り着く「後ろめたさを受け入れる」という単純明快な答え。キッカケを与えたのは神かもしれないが、左右するのは個人の意志なのだっていう感情に乱気流を抜けたときのような爽快感があったし、悪天候が晴れない者たちへの希望として清々しく感じました。『LOOPER/ルーパー』(2012)に次いで今年暫定2位であります。おわり。