エレクトリカルな2.5本立て『オズ はじまりの戦い』と『シュガー・ラッシュ』+『紙ひこうき』

オズ はじまりの戦い』感想。

オリジナル作品に詳しくないので細かいところはわからないんですが、とっても楽しめました。物語全編にある「信じること」への強度。これが素晴らしかったですねぇ。

主人公が単なるチャラいペテン師であることを事細かに描く白黒でのオープニング。これが終わると物語の舞台移動と共にスクリーンがウィィーンと動き、映像も白黒からカラーへと移り変わっていきます。ここでボクが感じたのは『ヒューゴの不思議な発明』(2011)が描いたような映画愛、ひいては文化そのものへの「愛」です。この心意気さえ感じ取ることができれば、あとはもうオールオッケーですよ。

「オズの国」がスリルに満ち溢れた世界であることを示すライオン襲撃の場面で、映画においてライオンがガオーとくれば物語の主要都市であるエメラルドシティに関係もあるMGMを想い起こし、そこには『オズの魔法使』という歴史を感じます。クライマックス直前に「大トリック」への期待感を煽る場面として太鼓を叩く少年少女が一瞬映りますが、これにはサム・ライミ監督の代表作である『死霊のはらわた』(1983)のリメイクを控えているマンデート・ピクチャーズを感じます。ミッキーマウスライトセーバーを握るご時世となりましたが、映画という「奇術」にある夢と魔法のパワーを信じる心さえ大切にしていれば万事オッケーってことなんでしょう。煙に照射されるオズのデカい顔=映画という解釈からそんなことを思いましたね。おわり。


シュガー・ラッシュ』感想。

まず、同時上映となっている短編アニメ『紙ひこうき』が、全編フル愛情の絶品アニメーションでありました。うだつの上がらない日々に訪れた恋物語。ぴらぴらと風に泳いだり壁にちっとんちっとん当たったりする紙たち。主人公の恋心を宿したあとに紙が物語を後押ししてくるのが面白かったです。こうした「愛する心」の表現をアニメーションでやられると強度はより一層ですね。久しぶりに映画館で泣けました!最近映画館で泣けてないなーなんでだろーと思っていたところだったので、いやぁ、最高でありましたね。

ってな具合に優しく絆されたあとに『シュガー・ラッシュ』のキャラクター愛がたまらないです。描かれるほとんどはゲーム内でのすったもんだなんですが、いっとき、プレイヤー側に視点が移ります。「そのゲームおもしろそー私にもやらせてー」と言うゲーマーな少女に対して「ダメダメーこのゲームは今日オレたちの陣地ー」と威張りながら予約コインを弾き飛ばして少女に場所を譲らないやんちゃボーイたち。しかし、それにめげないゲーマー少女は「いいもーん私こっちやるからー」と、主人公ラルフのいる古いゲームへと移動します。この場面にボクは「ゲーマー少女イイなぁ!素敵!」と思いました。作り手側のプレイヤーへの「信頼」を感じるんですねぇ。

最終的にこの場面が伏線となって大団円に華を添えるわけですが、これって、プレイヤー側であった少女の「愛する心」と、ゲーム内で描かれたキャラクターたちの自分への「誇り」の邂逅ですよね。どんなゲームにもあらかじめ設定がある以上、何かしらの有利不利や覆せない部分が出てしまうけれど、そんなトコロも愛することは勿論できるし、また、そういう想いってのは何よりも輝くものなんだよ、っていう信念が見て取れて大満足でしたね。『紙ひこうき』と『シュガー・ラッシュ』、二本併せて出会いと別れのこの時期にぴったりの傑作アニメでありました。最高!おわり。