田舎の武器庫になんでもアリフォルニア『ラストスタンド』

ラストスタンド』感想。

違反待ちをしているパトカーの横を目にも止まらぬ速さで駆け抜けていく車。観客にはそれが車だとわかるが、ドーナツに夢中の警察官にはわからない。時速300km超えの測定値から無灯火のジェット機だと思ってしまう(それもスゴイな!)。それからCG画面に変わってタイトルコール。舞台はメキシコ国境付近の田舎町へ。アーノルド・シュワルツェネッガーが保安官としてスクリーンに復活。町は地元ハイスクールのフットボールチームの応援へ出掛けようとワイワイガヤガヤ。この賑わいがまるでシュワさんの俳優復帰を祝しているようなイイ感じ。車を置いて応援についていこうとする市長の駐車違反を咎めるシーンなんかはシュワさんの知事経験を踏まえているようで気が利いてます。

この、冒頭で行われる「町の若い衆のほとんどは応援にお出掛け」「市長のイイ車とハイスクールバスは置きっぱなし」という説明が、後に伏線として地味に活きてきます。映画全体にあるこの地味さがイイんですよね。渓谷に橋をつくって国外逃亡ってアイデアは派手なんですけど、手段としては結局「車をかっ飛ばすだけ」ですからね。この地味ハデ感!そこにある、人間最後にモノを言うのは、心意気なんだよといった感じが見ていて心躍ります。

現実離れのスピード感と確かな重量感のあるカーアクションの上手さと多種多様の銃火器が画面を盛り上げ、そして、その中心にアーノルド・シュワルツェネッガーというスターを据える飾り気のない強かさ。韓国のキム・ジウン監督がどうしてこんなイマドキ地味な映画を撮ったのかっていったら、そりゃきっと好きだからでしょうね。異国の地で映画撮影をすることで、逆に自分の映画愛に立ち返ることができたんじゃないでしょうか。そして、その想いと呼応するかのようにシュワさんの「俳優力」がスクリーンで躍動する。怯える部下を前に「実は俺も震えてる」と武者震いを見せるシュワ保安官、と、こんな感じでちょいちょいシュワさんの復帰を意識させるサービス精神がイイですよね。そんなこんなで素晴らしく楽しいシュワさんアクション映画復帰の祝砲でありました。おわり。