続きはloveで『ルビー・スパークス』

ルビー・スパークス』感想。

去年いい評判をたくさん見かけていた期待作。レンタルで見ました〜。物語的には、恋愛の逡巡をユニークに描いた『(500)日のサマー』(2009)のようであり、形式的には『主人公は僕だった』(2006)のようでありましたが、感覚的にはどちらとも違う感じ。よく、小説や映画などの創作物に触れたときのことを「出会い」と表現することがありますけれど、その「出会い」の部分には「偶然性」を感じますよね。読めたコト見れたコトへの。この映画のテーマも、ひょっとしてそういうことなんじゃないかなと思いましたよ。

主人公カルヴィン(asポール・ダノ)は、まるで社交的な性格ではないけれど、幸か不幸かベストセラー作家になったこともあり色んな人との出会いがありました。お近付きになろうとしてくるファンの子やメシの種だと擦り寄ってくる業界人、執筆への悩みを聞いてもらっているセラピストや母のぶっ飛んだ再婚相手。ついには、小説の中の架空の人物であるルビー・スパークス(asゾーイ・カザン)とさえ出会ってしまいます。しかし、愛想を振りまくのは苦手だし、理想の女性は次第に幻想へと変わっていってしまう。幻想を受け入れて現実に舞い戻ってからは再び抜け殻の人生。でも、そんな人々との出会いが、カルヴィンの中には「言葉」として残っていました。カルヴィンはそれを本に書き、自分を客体化します。それまで使っていたタイプライターを卒業し、Macのノートへと脱皮。

そして、本当の成長を見せるラストシーン。犬好きの女の子と出会えたらいいなという動機で飼った犬スコッティが、公園にいる女性にじゃれる。すいませーんとカルヴィン。彼女はルビーによく似ていた。けれどルビーではない。彼女はカルヴィンの本を読んでいた。それボクの本だと話が弾む。結末は言わないでね、と彼女が言う。言わないよ、とカルヴィンは言う。少し微笑むカルヴィン。ここで映画は終わります。カルヴィンは、何故ラストシーンで微笑んだのか?それは、ルビー似の彼女との「出会い」に対する「感謝の気持ち」ですよね。そんな感情はそれまで彼が持っていなかったものでした。ほんとうの「奇跡」は最後の最後に起こったんですね。さらに、スコッティが見つけたルビー似の彼女と出会ったことにより、カルヴィン自身にとっての本の「結末」は変わりました。彼女とのこれからを予感させますからね。だから、「言わないよ」と言うカルヴィンの表情からは「キミと会ったおかげで言えなくなったよ」という感情をも読み取れます。ッくぅ〜!ニクい!ニクい!去年見てたらベスト入りだったよもう!ハイ。この映画との出会いにひたすら感謝です。最高!おわり。