『リアル〜完全なる首長竜の日〜』残る多くの謎と大きな感動

リアル〜完全なる首長竜の日〜』感想。

黒沢清監督最新作。MOVIX宇都宮の一番デカいシアターでかかっていました。入場後の客入りは平日につき微妙でしたが。まぁ、それはそれとして面白かったです。よくわからない部分も数多くあるんですけど(掌の〇とかロッカーとか)、終盤の一点集中な描かれ方に感動。かなり満足いきました。どうでもいいことですが、松重豊が一度も見慣れた姿で登場してくれなくて楽しかったです(ゾンビか老後w)。

昏睡状態にある恋人の意識下へと潜入する「センシング」、意識下の仮想現実に現れる魂のない人々「フィロソフィカルゾンビ」、センシング後の副作用として見えてしまう謎の少年や景色。起こる出来事の全てが、生きているのか死んでいるのか、果ては現実なのか仮想現実なのかわからないというもの。映像も、それにあわせて不穏さを保ちながらグレーゾーンな世界を構築しています。

そして、物語の色合いが反転してから映画は一気に加速。「今ならまだ間に合うんですっ!!」と猛ダッシュ。霧の向こうに見える光へと一目散。意識下から消えてしまったときに訪れる本当の死を打ち消すため、負けないこと投げ出さないこと逃げ出さないこと信じ抜くこと状態です。「登場人物の一挙手一投足に純粋に感動できる」、映画を見るのって、ひょっとしたらこの感情までいざなってもらえることが一番のよろこびなのかもしれません。事細かに描写を捉えて全容を理解できてはいないけれど、ものすごく好きな映画です。なんだかわかんないけど残るんだよなぁ。じめじめとした日本映画界に黒沢清が放った「回復」の一手。できれば、とびっきりに輝いてほしいです。おわり