イェーガーを守るひと『パシフィック・リム』

パシフィック・リム』感想その2。

感想1本でこのお祭り騒ぎを終わらせるわけにはいかなというわけで感想2本目。一番好きなキャラクター、チャック(asロブ・カジンスキー)について。準主役の彼ですが、性格がいちいちフツーじゃないっていうかヘンな感じでツボりましたです。

ジプシー・デンジャーの起動実験トラブル後、司令官室からきこえるのはチャックの怒鳴り声です。「5年ぶりに操縦する奴と新米に護衛されるなんてまっぴらだ!」。ここね、ヘンなんですよ。だって、まず最初に呼び出しを食らうべきは、トラブルを引き起こした2人であるべきじゃないですか。それなのに、彼が先に出向いているということは、彼が自分から話をしにいったということなんですね。起動実験トラブル時、通信回路をオフラインにしようとテンドー(asクリフトン・コリンズJr.)が必死にケーブルを抜こうとするその横で、ちゃっかりチャックも事態を収束させようと必死に頑張っているんです。

「今すぐここから逃げろ!」とテンドーが言ったり、ロシア組の夫妻が「こりゃあ、やばいな」とその場を離れる描写があることで、必死になっているチャックの熱意がわかります。ツンデレツンデレでも、彼にある“ツン”には悲哀が伴うんですね。司令官室の外でローリー(asチャーリー・ハナム)&マコと鉢合わせし、結果、ローリーと取っ組み合いになってフルボッコされちゃいます。このときのチャックの気持ちはきっとこうです。「オレのほうが、KAIJU一杯倒してるのにッ!オレのほうが、イェーガー上手く乗れるのにッ!」。

「イェーガー廃棄は使えないパイロットのせいだ」とチャックは言いました。が、父の手ひとつ悪い子はイェーガーで育ったであろう彼の根っこには「イェーガーが負けるはずない!!!イェーガーはサイキョーなんだ!!!」という純真さが汲み取れます。「やっちまえ!!!ジプシー!!!!!!」のセリフは、その爆発だったんですねぇ。燃える!

クライマックス。ペントコスト(asイドリス・エルバ)の「お前は分かり易い。父親と張り合おうとしている独りよがりのクズだ。」という言葉をチャックはどう受け止めたのか?ハイそうですねイェッサーなんて答えるのは、「二度と私に触るな」と言われてしぶしぶ了承したローリーと同じ失敗です。それを踏まえると、ペントコストの言葉に押し黙るチャックは自分の至らなさに気が付いたんでしょう。セカイサイキョーのパパと一緒にイェーガーに乗るんだという純真さがいつの間にか「高慢」へと変わっていた。「人類を守る」イェーガー本来の使命を忘れ、「KAIJUを倒すことでイェーガーを存続する」ことを目的にしてしまっていた。その変容に気付けたからこそ、チャックとペントコストのドリフトはうまくいきました。憧れの父と同じ第一世代の英雄であるペントコストのコー・パイロットとして同乗できることを「光栄です」と受け入れるチャックに胸が熱くなりました。

大気が合わなくて一度退散したらしいKAIJU星人。カテゴリー1までを斥候とし、それからカテゴリー2カテゴリー3と強大なKAIJUを送り込むことでイェーガーを多数撃破。どういった進化なのか分からないけれど電磁パルスも装備。溶解液はもちろん空中戦も可能に。おまけに妊娠もする。決死の覚悟でやってくるであろう裂け目への作戦はお見通しで、とどめをさすべくカテゴリー5で万全を期す。なのに、負ける。「侵略すること」で生き永らえてきたKAIJU星人たちの目には、「守るために戦う」ジプシー・デンジャーの姿がまったく理解不能なものとして神々しく映ったことでしょう。いやはや最高。また見に行くぞー!おー!おわり