病は奇から『サイド・エフェクト』

サイド・エフェクト』感想。

確かジョニー・デップだったと思うけど、映画を見てこんな言葉を思い出しました。「お金を持つと人が変わるんじゃない。お金を持つとその人の本性が出るんだ」。もちろん見る角度にはよるのだろうけれど、なるほど確かにと思わされた言葉です。もしかしてこれがホントの金げn(ry

スティーブン・ソダーバーグ監督の映画は半分くらいしか見てないんですけど、潔癖症が感染してきそうな『コンテイジョン』(2011)、低体温でアクションしてくれる『エージェント・マロリー』(2012)と、近作はとても気に入る傾向にあったので今回の引退は本当に残念。これからって時だったのに!という想いで一杯です。精神科医ジョナサン(asジュード・ロウ)とその患者エミリー(asルーニー・マーラ)。2人による心の陣取りゲーム(我ながら雑)。

序盤、ジョナサンはハイチ人の少年を異常者扱いせず、あくまで「患者」として扱います。一見、彼の理解力を示すようなシーンですが、少年を乱暴に押さえ付ける警察官を止める素振りは見せないし、静止するような声すらかけません。幽霊を見たと言う少年を「自分はどう見たか」と講釈をたれるだけなんです。良く言えば冷静、悪く言えば冷徹な奴だな、という印象を受けました。

中盤、事件のことしか頭になかったジョナサンはうっかり息子の迎えを忘れてしまいます。呆れ果てる妻。ここで驚いたのが「迎えに来なかった」と息子が口を開くところ。これ、特に必要ないですよね。直前の妻とのやり取りでジョナサンが事件に飲み込まれている異常な状態にあることは十分わかりますもん。それなのに、息子にああいったセリフを用意したというのには、何かあると思うんですよ(思いたいんですよ!)。そう思うと、息子がジョナサンとは血のつながりのない「連れ子」だということ。そして、エミリーが夫との子どもを望んでいたこと。以上2点が「伏線」のように思えて、結末がおそろしくなります。

終盤、倍返しを食らったエミリーは精神病棟に戻され、詐病ではなく本当に病んだような表情を浮かべながら「すごくいいわ」と言います。タイトル「サイド・エフェクト」は「副作用」という意味ですが、エミリーには元々そういう「気(ケ)」があったんじゃないかと。インサイダー取引の悪知恵を覚えたからといって、それをどうするかは本人次第。本人が元々持ち合わせている資質次第なんです(って、ジョニー・デップが言ってた)。つまり、あの「すごくいいわ」というセリフは、「元々あった状態」になれたから「すごくいいわ」ということだと思うんですね。そして、ラスト。事件を解決したジョナサンは息子を迎えに行き、助手席に座る妻はとても幸せそうな顔をしている様子が映されます。一件落着のハッピーエンドに見えます。が、「迎えに来なかった」と言った息子は青ざめた表情をしていて何の感情も読み取れません。あんなに怒っていたなら、フツーの子どもなら、少しは喜ぶんじゃないですかね。なのに、あの「薬漬け」みたいな表情…。

「精神病はイギリスでは異常者扱いされるけど、アメリカでは応援されるからね」。ジョナサンは、精神を病んだ人間に特異な興味を持った人間だったんじゃないでしょうか。エミリーとの一件が彼の「本性」を表出させてしまったんじゃないでしょうか。そして、そのことへの「自覚症状」は見られない……。ハイ。うーん、まぁ、自分でもいやいやいやと思うけど(苦笑)。備忘録で書いておきます。おわり