2013年度ベストアクターは魔シュー・魔コノヒーさんに決定『マジック・マイク』

マジック・マイク』感想。

映画監督引退宣言をしているスティーブン・ソダーバーグ監督、2013年公開2本目の映画。最高に楽しい一本でした!セクシャリティ溢れるダンスシーンは見ていて肩身が狭くなると同時にその異様な盛り上がりに魅了…!帰宅してから自分のショボい身体を確認してフッと夢見心地から醒めるまでがこの映画の愉しみ方であります。ハイ。感想巡りをしてみれば、映画を見た女性陣による「いいわ〜触りたいわ〜」などというキャッキャウフフ反応が見られて、それも含め面白かったです(笑)

あらすじ。主人公マイケル・レーン(asチャニング・テイタム)は自称・青年実業家。土方や洗車サービスなど仕事をいくつも掛け持っているが、彼の資金源はクラブ・エクスクイジットでの看板ストリッパー“マジック・マイク”としての収入だった。しかし、周囲のメンバーがドラッグの斡旋などで小遣い稼ぎをするなか彼だけはオーダーメイド家具事業をコソコソとやり、ストリッパーとしての生活=「ヴァンパイアのような夜の生活」からの脱却をはかろうとしていたのだった。そんな時、19歳の若者アダム(asアレックス・ペティファー)と彼の姉ブルック(asコディ・ホーン)と出会う。世間知らずなアダムをひょんなことからストリッパーの世界へ招き入れたマイクは、弟想いで世話焼きな姉ブルックにアダムの面倒は任せろと言う。それをよそにアダムは日に日に夜の生活へのめり込んでいく。心配するブルック。彼女なだめるマイク。この三角関係が出来上がってから“マジック・マイク”の人生は加速していく……

ストリッパーとして活躍することに快感を覚えながらも一方で庶民的な暮らしを求めているマイクは、「できること/やりたいこと」の狭間で揺れている男です。映画は、この両立のなかに生きる人々を映しています。何一つ持ち合わせていなかった若者アダムは、ストリッパーとして大金を稼ぐようになり、その結果、危ない橋を渡りきる運さえも自分が引き寄せたものだと驕ってしまいます。一度転落したらダメなタイプですね。彼の姉ブルックは、両親がいないことからアダムの母親代わりをしており、気取った愚痴ばかりの嫌味な彼氏がいましたが、おそらくは今後の生活を見越して関係を保っているだけ。きっと、羽を伸ばしていたのはタトゥーを入れた17歳の頃まででアダムを想って早くに人生に区切りをつけたんですね。「笑顔の仕方を忘れた」そんな顔をした女性です。

ドラッグ絡みのトラブルを起こしたアダムを大金はたいて救うマイクですが、それはまるでストリッパーとしての過去を精算するようなんですね。そのトラブルを発端に「新しいショー」と銘打って自分の中にストリッパーとしての価値観を見出そうとするも観客の大盛況に心が躍動しないという「できること/やりたいこと」の決定的な乖離を迎えてしまいます。“マジック・マイク”の魔法は、ここで切れてしまいました。斯様に、狂乱のダンスシーンとは裏腹にナイーブなキャラクターが多いなか一人だけハジけているのがクラブの責任者ダラス(asマシュー・マコノヒー)です。彼による“お別れショー”で沸き上がる歓声に呪詛を唱えるような表情をするマイク。自分とは逆に「できること/やりたいこと」が完全一致したダラスにヴァンパイアよろしく生き血を吸われてしまったマイクは、「朝食まであと7時間もあるわ」なんていう素敵セリフに迎え入れられてブルックと「夜明け」を共にするのでした。そして、マイクをさかずきにしたダラスは、マイアミへとのし上がる…。そんな様子をハリウッドの酸いも甘いも見てきたであろうソダーバーグ監督が善悪も明暗もつけずどちらも絶頂として見せてくれた快作でありました。見ていてまじ気持ちいい!ダラス最高!おわり