生殺与奪物語『スノーピアサー』

『スノーピアサー』感想。

最後列の車両から最前列を目指す主人公カーティス(asクリス・エヴァンス)ら一派。彼らが絶望の淵から希望の光を目指すことで物語を牽引していきます。そこへ加わるナムグン(asソン・ガンホ)とヨナ(asコ・アソン)の韓国@グエムル組。2人は、カーティスらとは違うレール/物語を持って突き進みます。「出自」と「目的」の異なるグループがパーティを組む様子にRPG感があってテンション上がります。

同じレールを走り続けている列車のなかでは、その場その場の景色や通過点が風物詩/時間の目安となっています。1年の時を知らせる通過点が近づいたとき、がっぷり四つぶつかり合っていた両者がしばしその時を共有し、何とも言えない停滞感が場に流れます。で、この停滞感ってのは「最前列へ行くこと」を動力とした列車内の物語あってこそなんですね。

終盤、「カーティスの革命」と名付けられた本作の過去に列車にはいくつもの物語があったとわかります。18年間、列車の統制は「希望という名の物語に火をくべること」で保たれていたんですね。そして、それは繰り返され、パッケージングされ、操作されていました。そんな物語の中で、最も印象的に映されたのは「死に顔」です。降伏か死かといった選択肢を突き付けられたとき、生気が肉体から消えていくとき、物語が死体にむくっと生を与えたとき、自分が持っていた物語がまやかしだと知ったとき。物語による人々の駆動とその盲信を執拗且つコミカルに描いた「物語による生殺与奪」の映画だったと思います。

ラスト、爆破による火をよそに、雪解けの光が降り注ぐ。この光こそ本当の希望であり、そこにあるものこそ本当の物語です。それを紡いでいく突破口をドロップキックで開けてくれていたら超さいこーだったんですが、まぁンなわけないですね。印象深く味わい深い。“物語で殺し物語で生み出す”そんじょそこらじゃ得られない満足感に浸れる傑作でありました。今年1本目の暫定ベスト映画!おわり