ジョーク以外は本当のこと『ダラス・バイヤーズクラブ』

ダラス・バイヤーズクラブ』感想その2

☆主演男優賞マシュー・マコノヒー
助演男優賞ジャレッド・レト
祝・オスカーW受賞であります。同じ作品から主演&助演を受賞するの珍しいなと思ってちょっくら調べてみたところ、『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)のヒラリー・スワンク&モーガン・フリーマン。『ミスティック・リバー』(2003)のショーン・ペン&ティム・ロビンスというイーストウッド無双が近年の受賞例で、それ以外になると80年代までさかのぼることになりました。ハイ。それなりに珍しかったです!

ヤクも女もキメまくりヤリまくりの男ロン・ウッドルーフ(asマシュー・マコノヒー)はロデオ賭博に興じている。運を試すということは、自分の「価値」を知る欲求であり、その価値とは生という名の「死への担保」になります。「何が起きても何とかなる」。そう思ってあらゆる出来事を切り抜けて生を謳歌してきたから、突然の死の宣告に「オレを殺せるものなど無い!」と反発するんですね。あの第一声には、彼の生をひしひしと感じました。

「死にかけの自分」を「それでも生きている自分」に転換し、自らを武器に闘争を始めるロンは、生死の狭間で自分を貫くレイヨン(asジャレッド・レト)と行動を共にします。「自分がやってるのはビジネスでボランティアじゃない」と“一線”を越えないよう事を運ぶものの、事故に遭った不法移民の人命優先に見えた根っこの善がHIVによってあらわになり、自分を偽らないレイヨンの影響から、次第に「自分に正直」になっていくんですね。ロンのそんな部分を、善悪に敏感な医師イヴ(asジェニファー・ガーナー)はいち早く察知し、やがて同調していきます。彼女の前でおどけてみせるロンはツンデレそのもの。大人になってから出会う良き理解者ってのは、何だかくすぐったいものなんですね。

「偏見」のタチの悪さは、相手への攻撃というより「自分の身を守るため」の防御として蔓延しているところにあると思います。それが攻撃であることさえわかっていない無理解。だから、ロンはHIVについて猛勉強し、「自分の身は自分で守る」ことを体現します。そうすることで、社会の病巣に風穴をぶち開けてやろうというのがダラス・バイヤーズクラブです。ラスト、賭博ではなく、自分の体で価値を示すロン。映画そのものが簡潔に凝縮されたシークエンスでありました。格好いい!最高!Wオスカーおめでとう!おわり