桜前線せまる映画いくつか

もらとりあむタマ子』感想。

栃木ではやや遅れての上映。「少なくとも、今ではない(ドヤァ)」のところ最高。女優・前田敦子はすごくイイと思います。見ていてワケなく楽しい。タマ子(as前田敦子)と父親(as康すおん)二人の掛け合いがメイン、っていうか、劇中の季節感すら掛け合いのみで作り出していく。出汁を取るように必要なものを描き出す。「成長」するのは何も本人であるべき必要はない、ってのが物語の好きなところ。タマ子が踏み出したのは家の外からチャリで行ける距離くらいまでです。まさにモラトリアム。これから始まるプロローグ感が実に心地いい映画でありました。


ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』感想。

アレクサンダー・ペイン監督作品。宝くじを取りに行くと譲らないウディ(asブルース・ダーン)との道中、「あそこはエドの家よ」とお墓の前でスカートをまくり上げる強烈お母さん・ケイト(asジューン・スキッブ)は言う。それを聞いた二人の息子デヴィッド(asウィル・フォーテ)とロス(asボブ・オデンカーク)はしめしめと圧縮機をかっぱらいに行く。しかし、その家は人違いで全く別の知り合いの家だった。ここ、吹き出しました。「何かを信じた人」の厄介さ/そのうっかり部分がにじみ出てるシーンと思います。「こうであると信じたい」「こんな風に伝えたい」、今も昔も変わらない映画や物語にとっての“普遍性”を感じさせてくれるのが好きでした。


ローン・サバイバー』感想。

キングダム/見えざる敵』(2007)、『バトルシップ』(2012)などのピーター・バーグ監督作品。容赦のない“場(ば)”映画。ネイビーシールズによる暗殺が行われる場、彼らに反撃するタリバンのいる場、タリバンを敵視する者もいる場、飛び交う銃弾のようにさまざまな思想が入り組み、交戦状態になると右も左もわからなくなる。呼吸は小鳥のさえずりにかき消されそうなくらい微かなものとなってしまい、照り付ける陽光と山々の威厳が人間を風景と同化させてしまう。そうやって人間の心と体が削り取られていく“場”。数回ある岩や樹木に叩きつけられながら転げ落ちていくシーンの生々しさが凄かったです。おわり